第79話
ドアにかけていた手を離し、そのまま昇降口に向かおうと一歩踏み出した。
踏み出そうと、した。
ーーーーでもま、レイちゃん…
ピタリ、と足が止まる。
思わず振り返った。
ドアから少し離れたせいで、話の内容が聞き取れなかった。
でも、今…
俺をレイちゃんと呼ぶ人は、1人しかいない。
もう一度ドアの前に立ち、手をかけた。
ふっと息を大きく吸い、目をぎゅっと閉じる。
肺を満たした空気をゆっくり全て吐き出し、瞼を開いた。
躊躇わないように、
勢いよくドアを開けた。
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