第68話

「………章弘。もう、いい」



「言い訳あるか!」



「もういいんだ。

……俺がもういいって言ってるんだから、いいんだ」



「……っ、…レイちゃん、なんで…

なんで、自分のことどうでもよくしちゃうんだよっ」






泣きそうな顔で、章弘が俺に迫る。


今にもこの場にいる全員を殴りたいのだろう、その手は震えていた。

…ここで章弘が人を殴れば、俺の立場がさらに悪くなる。



だから、耐えてくれているのだ。





きっと自分のことだったら、章弘はためらいなく殴ったのだろう。


そう思うと、思わず笑ってしまった。





「何笑って、」



「章弘。…ありがとな」



「………っ…」






章弘の肩をポンと叩き、立ち上がった。

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