第64話

俺が入ってきたとき、この女は相手を睨みつけていた。


抵抗できないとわかっているからか、抵抗はしていないものの、諦めていない瞳で4人を見返していた。





それなのに、何故か今泣き始めた。









「ちょっ、……誰か呼んでくるから、待ってろ」



「大丈夫。……大丈夫、だよっ…」



「大丈夫なら泣かねぇだろ」



「違うよ。…違うんだよ」



「……………はぁ」








人を呼んできてほしくない様子だ。


まぁ、こんな格好じゃな。

今さっき襲われたばかりの人間が、誰かを信じて頼れるはずはない。




俺も男だし、出た方がいいだろう。








「……暗いし、適当に帰れよ」



「……うん。ありが、と…っ…」








教室から出ようとして、ドアを壊したことを思い出した。


……まぁ、この女が何と言おうが学校側には報告するべきだろう。









しかたない。

章弘と補習を受ける覚悟をしておこう。

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