第40話

「………なぁ」


「ん〜?」


「………そうとう酷くヤられてんだろ」


「ん〜〜?」


「体の傷もだけど。

……そんなんでよく生きてんな」


「生きてるよ〜」








ここから、校庭にある時計が見える。

時刻は18時。




そろそろ帰ろう。




ビタビタになったカバンを持ち上げ、るんるんと歩き出す。








「………帰んの?」


「帰るよ〜」


「…………家にか?」


「家にだよ〜」


「……………」


「…………?」






帰ろうとする私の手首を、太郎が掴んだ。

首を傾げて振り向くと、とくになんの表情も浮かべてはいない太郎がこちらを見ていた。





「太郎さん〜?どうしたんですか〜?」


「………あんた、何でそんな風に生きてられんの?」


「そんな風って〜?」


「あんたの成績、張り出されてた。

学年トップだろ」


「あれ〜?太郎さん同級生〜?」


「…………そうだけど?」








クスクスと笑うと、うわぁ…と言いたげな嫌そうな表情を、太郎が浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る