第39話

「………そんなもん、どこにもねぇよ」


「ん〜?………あ〜、太郎さん〜?」


「……誰が太郎だ、誰が」


「あれ?田中太郎さんじゃなかったっけ〜?」


「どう考えても違うだろ」


「そうなの〜?」








カバンをその場に置き、濡れることを気にせずに太郎がこっちに向かってきた。







「………昨日も思ったんだけどさ」


「ん〜?」


「…………なんでそんなボロボロなのに笑ってられるわけ?」


「え〜?」







太郎が嫌そうに顔を歪めた。



そんなに嫌ならば、私のことなど忘れてしまえばよかったのに。

どうせ、昨日性欲処理に付き合っただけの関係だ。



この人だって、私が好きで抱いたわけではない。







「作り笑いかと思えばそうでもなさそうだし。

そんなんなっても毎日楽しいわけ?」


「楽しいよ〜」


「…………ドM?」


「太郎さんドS〜」


「…………」









両手を広げ、くるくると回った。








「どこま〜でも〜、行こう〜

道は〜、寂しくとも〜」









今日は、家に父も兄もいる。


父は、私をよく殴る。

兄は、殴られている私を犯す。








「あのほ〜し〜を〜、見つめ〜ながら〜

迷わ〜ずに行こ〜う〜」











ピチャピチャ、ザーザー、


くるくる、ピタピタ、

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