第16話

「ねぇ、”ゆかり”。これから行きたいとこあるんだけど、予定ある?」



バッと顔をあげた。

名前を知ったはずなのに。

彼は、私をゆかりと呼んだ。




友達も困惑している。



「あの…だから、その子、流理ですよ?」



「そうみたいだね」




理解はしているらしい。それなのに、私をゆかりと呼ぶ。



「というか、知ってるけど」



その言葉が、理解できなかった。

思考が停止する。

体が硬直して、震えが止まらなくなる。




友達が、後ずさりし始めた。

何かがおかしいと気付き始めたのかもしれない。



どうする?誰か呼んでくる?なんて囁きあっている。




「あ!よぉ〜、ゆかりちゃん?」



路地裏であった男たちが通りかかった。

私も友達も青い顔をしているだろう。



見るからにヤバい集団である。

ここは大学の校門前。

人が集まり出した。トラブルを起こしたら、退学か、退学になるかもしれない。

それどころか、この人たちについていくことになると思うけど、その後生きているのだろうか。




どうしよう、どうしよう、どうしよう…

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