第9話

怖かった。名前を知られたら、何をされるのだろうか。

ズボンのポケットに、学生証が入っている。それに気づかれなければ、適当な名前を言っても気付かれない。



きっと、大丈夫。



「……さ、佐伯ゆかり、です」



「さえき、ゆかり…」



男ーー縁が確かめるようにゆかり、ゆかり、と呟く。



ーーーーーパサッ



縁は着ていたカーディガンを脱ぐと、私に羽織らせた。



「送る」



「え……」



家の場所を知られたら、何をされるかわからない。

それも怖い。ガタガタと震える。



「なぁ、お前、本気?ヤるために捕まえたんじゃねーのかよー」



「うるさい」



男たちは呆れたようにしていたが、縁は私を支えながら立ち上がる。

それにつられて私も立ち上がった。




「いこ?」



縁にひっぱられ、そのまま家に向かう。

家どこ?と訊かれ、戸惑ったが、「服、破ったままだし、そのままで1人で歩かせられない」と言われ、渋々教えることになってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る