第155話




「いやぁ〜、璃久ちゃんすごいなぁ!

よく気づいたよ〜」


「ほんとほんと。

全然気づかなかった」


『役に立てたならよかった』


「ありがとな」




おっさんと澄人が私の頭を撫で回す。


ぐちゃぐちゃになった髪を整えながらも、こんな風に人に褒められたののは初めてで。


できることをするのは、当たり前のことだと思っていたから。





かなり、照れる…。





「おっ!なんだぁ?璃久ちゃん、照れてんのなぁ?」


『照れてない』


「そう?照れてるんじゃない?

隠さなくてもいいのに。

ね?おじさん」


「おうおう!

やっぱ、女の子は照れると可愛いなぁ?澄人」


「だね」


『だから、照れてない!

そして可愛いわけないだろ。

私のどこを見たら女の子らしく見えんだよ!』





そんな私を、おっさんも澄人もからかっていじってくる。







和やかな空気だった。


今まで銃を持っている時、こんな和やかな空気だったことは一度もなかった。




生きるか死ぬか。

そんな、殺伐とした空気の中でライフルを構えていたから。




「さぁて!この近辺で鹿探し、やっかぁ!」


「だね」




私も頷き、再び歩き出した2人の背中を追って歩き始めた。




胸がほっこり、温かいのを感じながら。







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