第152話
「あっはっは!
ま、撃ちたいなら免許取らなきゃなぁ、璃久ちゃん」
『そーだな』
笑ったおじさんの声で現実に引き戻された。
そう言いながら猟銃を肩に担ぐおじさんは、どこか誇らしげだった。
………ん?待てよ?
免許…。
『…………あ。持ってる』
「お?なんだ?」
私は猟銃を指さした後、両手の人差し指で四角を描いた。
それを見て、狩猟免許を持っていると伝わったらしい。
オッサンは目を丸くした。
「ありゃ!持ってんのかい⁉︎
そりゃあ一緒に撃ってみたいもんだぁ!」
「(……確か、ライフルの弾を入れてたとこにぶち込んでた気が…………あった)」
私は一枚の厚紙……ぐっしゃぐしゃになったやつを取り出した。
猟はしたことないし、猟銃も握ったことはないのだが。
以前ルナの組員として潜入していた時に使ったものだ。
猟を趣味にしているターゲットに近寄るために渡されたものだった。
猟銃に見えるようライフルを加工して持ち込んだ際に、許可証が必要だった。
もちろん講習を受けたわけではなく、偽装したものだ。
"お前はあると便利だろう"と言ってそのままもらっていたんだった。
「おお!すっげぇヨレヨレだなぁ!
あははっ!」
『あはは…』
使う機会もなく、ここに押し込めたままだったのをすっかり忘れてたわ…。
ついでに奥底からは銃砲所持許可の紙も出て来た。
もちろんぐしゃぐしゃ。
「なんだなんだ!持ってんのかぁ!
じゃあ今度一緒に猟銃買いに行くかぁ!
あっはっはっ!」
『あ、あはは…』
と、帰りながら話している間に本当に買いに行くことになってしまった。
しかも、この日はまだ村に戻った時点でまだお昼。
今から行くぞーと言われ、無理やり電車に乗せられて直行である。
…………マジかよ。
なんやかんやとおっさんと店主が話し、気づけば自分の手の中に猟銃。
な、…なんて素早い…。
「あっはっはっ!いいねいいねぇ!
どうだい?持った感じはー!」
「(……………)」
私は苦笑しつつ、猟銃を構えてみた。
…といっても、オッサンの見よう見真似。
ライフルより重い。
それに、スコープが…。
度がきついメガネを無理やりかけてるみたいな感覚になる。
『……スコープ、外せませんか?』
そんなことをジェスチャーで伝える──誰もが手話を覚えているわけではないので──と、店員は首を傾げた。
「お?…外せる外せる!
でもいいのか?見にくくなっちまうぞ?」
『大丈夫』
外してもらってもう一度構えてみた。
店主とおっさんが話している間に、今度はライフルと同じ構えでこっそり。
久々に持った銃の感触は、やっぱりどこか安心するものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます