ドン!
6、だるま落とし綱引き
第109話
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東区桜祭り 2週間前
浴室に入り、すぐシャワーをぶっかけられた。
しかも全身綺麗に洗われた後、そのまま湯船にぶっこまれ、こいつがシャワーを浴びているのを呆然と眺めるという状況に至る。
少しげっそりつつ、ぼんやりシャワーを浴びているこいつを見つめた。
綺麗な肌に傷はないようだが、体にはすでに乾いて固まった大量の血痕がある。
それを、シャワーがじんわり流して行く。
血を湯で流したあと、こいつも湯船に入ってきた。
それから約10分くらいたっただろうか。
湯温はかなりぬるま湯で、のぼせることはない、が…。
なぜか足の間に座らされ、後ろから抱きしめられている。
首に顔を埋められてそのまま沈黙が続く。
………10分間だぞ。
10分もその体制で沈黙って…。
さすがにそろそろ耐えられそうにない。
「……ねぇ」
「…………」
返答はない。
しかし、ほんの少しばかり視線をこっちに向けて来ている気配はする。
とりあえず話をしよう。
いや、言いたいことを言おう。
「………なんでこんなに広いのにさ、2人でこんな密着して縮こまってるんだい?」
「……………」
「君、お風呂入りたかったんだろう?
とりあえず足伸ばしてゆっくりしてきなよ」
「……………」
そう言って立ち上がろうとした。
しかぁし…。
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………いや、離して欲しいんだけど」
「……………」
沈黙かよっ!
たしかに黙秘権はあるかもしれないけどなぁ!
ひたすら沈黙されてるこっちの身になれやぁぁぁぁぁぁ!!!
…なんて、か弱い乙女にふさわしくないことを心中で叫ぶ。
まぁ、まぁ、まぁ。
とりあえず、立ち上がろうにも、腹に回された腕は固く、どうやっても離れない雰囲気しか漂っていない。
諦めて再び意味不明鬼畜無言ヤロウの膝の間に戻る。
「………そんなに仕事、きつかったの?」
「…………いや」
「でも君、体中傷だらけだったんだろう?」
「…………セックス強要されただけだ」
「ほぉ」
「しかも縛り癖のあるやつだった」
「ほぉほぉ、なるほど。
それで、慣れてないくせに好き勝手弄ってきた上に無理やり突っ込んできたってところかなぁ」
「そうだな。それに加えて縛り上げられたあと、"耐えてる顔が好き"とか言って切りつけてきやがった」
「うわー…。かわいそうに」
「元々そういう仕事じゃなかったんだ。
抱かれる気なんてさらさらなかったのに散々やりやがって…。
ムカついたから突っ込み返してきた」
「え。すごっ。
君って何故かわからないけど、仕事でその凶悪最強スティック使ったことなかったんじゃなかったっけ?初使用?」
「仕事なのにどうでもいいやつに反応するほど、俺はゲテモノじゃない。
部屋にあった道具突っ込んだだけに決まってるだろ」
「うわ〜…それはそれでえげつな…」
かわいそうに、相手。
きっと痛かったんだろうなぁ。
この人、明らかにおかしいもんなぁ。
見てよこの体。
毎日毎日、昼も夜も関係なく抱かれるこの体を。
傷と痣とこいつの所有印だらけだろう?
こんなやつさ。
相手は相当手ひどく突っ込まれたに違いない。
「残念ながら痛みなんて感じられないくらい丁寧に突っ込んでやったから安心しろ」
「え?じゃあなんでここに帰ってくると鬼畜になるの??その優しさをわけてくれ」
「へぇ。お前も突っ込まれたいんだ?」
「ちがーう!そっちじゃない!
優しさの話だ!!
それに…君のことだ。絶対取引相手、完膚なき姿に変わってるに違いない……っ!」
「そうだな。
…まぁ、もう人間としては終わってるかもしれないが、殺してないし」
「人はそれを"人生オワタ"と表現するのだよ…」
クスリ、と耳元で笑った声がした。
あぁ、やっと笑ったなぁ。
やっぱり、こいつの笑顔は1番安心する。
でもね、でもだよ。
「…………そろそろ離れてもい、」
「却下」
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