第107話


〜・〜


幸架side




「それが当時の様子ですか」


「あぁ。報告を受けた如月は4人に問い詰めたらしいけど、沈黙だ。

今は拷問かけてるらしい」


「…………なるほど」


「それと、4人が裏で何かしているのは確かみたいなんだが、何をしているかまではわかってないらしいんだ。

検討も付いてない」


「現場検証は?」


「当時の監視カメラ映像は抜かれててなにも映ってなかったと。

現場にも、白露をあんな風にしたやつの痕跡はなにもなかった。

…この映像が、監視カメラから抜かれていた映像で間違い無いだろうな」





開理が手帳から視線をあげた。

木田やルナ組員も何やら考え込んでいる様子である。





「アズサが送ってきたってことは、この監視カメラ映像を抜き取ったのはアズサで間違い無いだろうが…」


「なんのためにそんなことしたんだろうな」


「……あのクソガキの考えは全然わかんねぇよ」





愚痴をこぼす2人を見ながら、俺も思考を巡らせた。





たしかに、不可解さばかり。

でも、いくつかわかったこともある。






「…璃久さんはアズサさんといる可能性が高いですね」


「は?」





その4人が何のために動いていたのかは"考えなくてもわかる"が、それさえわかれば璃久と連絡が取れない理由もだいたい把握できる。




そして、この監視カメラ映像…。

たぶん、如月と医療隊に電話しに行った2人が監視カメラから抜いた映像だ。



電話をしに行ったには帰ってくるタイミングが遅すぎる。



それに、医療隊は如月の命令でしか動かない。

電話役は2人もいらない。

如月に電話をすればいいだけのはず。






そしてドア前で待機していた組員。

そいつは隊長の監視をしていたのだろう。


途中でバレて行動を制限されれば、すでに失敗に終わってしまっている"計画"をさらに失敗を重ねる結果となる。




そして最後に、トイレに行った組員。




おそらく、仲間に状況報告をしていたのだ。





第三隊が、出動当時5人しか動けなかったというのも、それで理解できる。


最初から手が回されていたのだ。

第三隊のあの5人のみを残し、全員に別な問題を片付けさせていた。



第1、第2、第4〜第6までの隊まで出はらい、第三番部隊5名しかいなかった、なんておかしすぎる。




そして主犯は十中八九"アレ"だろう。

だとすれば、狙いは…。






「……ご本人に聞いてきますか」


「本人って?というか幸架、さっきから言ってる意味が全然わからん」


「場所がわかったら連絡するので、それまでここで待っててもらえますか?」


「お前っ!俺の話全然聞いてねぇだろ!

だいたい、お前1人で外 出せるかよ」


「じゃあ木田さん以外で付き添いお願いします」


「……そんなに嫌か?なぁ、もう少し隠せ。

せめて本人の前では隠せよ」


「あなたがここに残らなくて誰がここで出動命令出すんです?」


「は…?」







俺は立ち上がり、木田に視線を向けた。




「狙いは、"璃久さん"です」


「は⁉︎」


「アズサは1ヶ月以上前から気づいて先回りしてたみたいですね」


「なんで、…」





困惑する木田に説明する時間はない。


俺は親則に視線を向けた。


さすがに親則には待っててもらうことしかできない。

出動となればここも騒がしくなる。





「親則さん、家に送ります。

心配だとは思いますが、家で待っていてもらえますか?」


「…わかったよ」




親則も、自分にできることはないのだろうということは理解しているらしかった。

特に反抗する言葉を言うわけでもなく了承する。




「幸架、小豊さほうをつける。

……1人では行動するなよ?

それと、終わったらちゃんと説明しろ」


「わかってますよ。

…それに、今は鎮静剤と筋弛緩剤が効いてますから、そんなに動けません」


「お前にとっての"あんまり動けない"は、"割と鍛えてる一般男性程度の力は出る"ってことだろ」


「さぁ…。

まさか、あなたが俺にそんな過大評価をしてくれるとは。

思ってませんでしたよ」






クスリと笑みを浮かべてやれば、木田は嫌そうな顔をした。





「誰に何しに行くのかはわかんねぇけど、

………殺すなよ」


「殺しはませんよ」


「……………」








璃久がせっかく繋いでくれた未来を、まさか自分で絶つとは。

バカなヤツ。





殺しはしない。

でも生かしてやるつもりもない。



吐けるだけ情報を吐かせた後は、…。









「木田さん。呼びましたか?」


「小豊、幸架についていけ。絶対1人にさせるな」


「了解です」







小豊はしっかりうなづき、私についてきた。


私は親則の歩くスピードに合わせて歩く。






部屋に出る前、一度だけ振り返った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る