第105話

蜘蛛三番隊隊長 Side

   


〜・〜





「突入!」



出払っているものが多く、5人しか集まらなかった。


それでも、1人よりはいい。




白露は情報屋。

ブラックリストに上がっている名ではあったが、蜘蛛やルナの貴重な情報源でもあった。



性癖は異常だが、彼の情報は全て正確なもので、信用は厚かった。




ちなみに鍵はフロントに適当な嘘をついて借りてきた。





「………テレビ?」





室内は、大音量でテレビがつけられているようで、かなりうるさい。

そのせいで部屋の様子がなかなか把握できない。



それに、白露と情報を取引していた人物や、万が一俺たちを潰そうとわざと呼び出したなら、襲撃者がいる可能性もある。



なるべく物音を立てないように行こう。





「…………進むぞ」





全員が頷いたのを確認し、そろりそろりと進む。


銃を構えたまま浴室の扉を通り過ぎた。





そして。





俺たちは、'"それ"を発見したのだ。












「あははっ!

あはははははははははははははははははっ!!

さいっこうだよぉぉぉー!!!!

あははっ!あはははははっ!

いいねぇ、いいねぇ〜。

いいよぉぉぉぉぉーっ!!!」














思わずその場にいた全員が口元を手で抑えた。


思わず俺も吐きそうだった。





何とか耐えたが、その異様な光景に。


誰もパッと行動に移すことができない。










白露は、仰向けになって全裸の状態でベッドにいた。


大きなベッドに、大の字のように。





その瞳には恍惚とした光が浮かび。

眼球は絶え間なくギョロぎょろと彷徨う。

それなのに、その視線はどこか虚空を眺めるように、何も映ってはいなかった。




泡を吹き、口元を唾液でぐしょぐしょに濡らしている。





そして白露の腹部には、何度達したのかわからないほどの体液が付着し、肛門は開きっぱなし。




さらに、排泄物もかなり漏らしているようだ。

ベッド周辺はかなり汚れていた。






「あははっ!!!!あははっっっ!!

あひひひひはははははっ!!

ふふふふふっ!あはっ!」













白露の笑い声に、ハッと我に返った。

呆けている場合ではない。




「……なんだ、これは…。

とり、あえず、如月さんに報告して、医療隊の要請を…」


「あ…おっ、俺!如月さんに報告してきます!」

「おっ、俺は、医療隊に要請をっ…」





バタバタと走っていく3人の背中を見送った後、俺は意を決して部屋の中に足を踏み入れた。



なるべく足跡や触れた跡がつかないよう、床の汚れた部分を踏まないよう気をつけて進む。



いまだ笑い続けている白露のもとへようやくたどり着いた。


ここまでの精神異常。

おそらくクスリを盛られたのだろう。




白露に触れるわけにはいかないため、目視で確認できる範囲で白露の体に視線を走らせる。



どうやら注射のたぐいを打たれたわけではなさそうだ。


だとすれば、口に流しこまれたのか。




暴力を振るわれた形跡や白露自身が抵抗して暴れたような痕跡もない。


だとすれば、白露は自らこの行為を受け入れたことになる。




もう少し調べてみよう、と部屋を見回した。




窓には鍵。

机にはカップが1つ。飲み干されているが、微かに残っている跡から、飲んでいたのはコーヒーか。



床に落ちている服は1人分。白露のものだろう。



他にもベッド下や机の引き出し、白露のカバンをのぞいてみたが、これといって白露以外の痕跡はなかった。






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