第101話
「準備できた。USB開くぞ」
開理の声かけに、俺たち3人は顔を上げた。
近づいてパソコンの画面を覗くと、いくつかの動画が保存されているようだった。
このアングルは…どこかのホテルの廊下、天井の監視カメラのようだ。
「再生する」
開理が再生ボタンを押すと、動画が再生された。
「このホテル…。最近見た気がするな」
「あぁ。俺もだ」
少し考え込む開理と、それに頷く木田をチラリと視界に映しながら、私も画面を見つめた。
廊下だけではどこのホテルかはわからない。
ビジネスホテルであることはなんとなくわかるが、どこにでもあるような内装だ。
1分ほど映像を流したが、数人の一般客が廊下を歩いて行ったのみで変わったところは一つもない。
「特に気になるものは映ってないな」
「親則さん。これは梓名義で送られてきたのか?」
「うん。住居は書いてなかったけど、名前はここに」
画面から目を離さないようチラリと親則が持っている封筒に視線を走らせると、たしかに"梓"と書いてある。
「……………あ」
「これは…」
「…………俺?ですかね」
廊下の奥から現れたのは、1人の男に先導されるように歩いてきた自分だった。
でも…。
監視カメラの映像は、5月12日。
アズサが失踪する前日だ。
この日俺は…。
「……これは俺ではないです。
このホテル、たぶん璃久さんが引き受けていた依頼の待ち合わせ場所だった…はず」
「これがお前じゃないってのはどういうことだ?」
「待ち合わせは午後1時でした。
璃久さんの代わりに俺が行きましたが、2時間経ってもターゲットが来なかったので、確認の電話をしたんです」
「それで?」
「もうすでにターゲットはホテル内に入ったと。誰かに誘われて部屋に向かったのも目撃されていて、先に動いていた組織がさらっていったんだろうということになりまして。
そのままその依頼はなくなりました」
「………この映像、何時だ」
「ちょっと待て…」
監視カメラだからか、日付も時間もちゃんと画面に表示されていた。
しかし、監視カメラ自体が古めなものらしく、少し時計の数字だけ見にくい。
開理がパソコンをいじり、画質をあげた。
ぼんやりとしていた数字が浮かび上がってくる。
映像を再び巻き戻し、ターゲットだった男──情報屋と俺に似た人物が現れるのを待った。
「……来た。楽生、止めろ」
「了解」
2人が現れると同時に開理が一時停止する。
表示された時間は、12時47分52秒。
俺がホテルの待ち合わせ場所に着いた時間は12時55分。
やはりこの時はすでに部屋に向かった後だったようだ。
それにしても、妙じゃないか…?
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