第100話


〜・〜



「……最初から変わった子だったんですね」


「あはは。…そうだね」


「でも、引き取る決め手はなんだったんですか?」


「決め手?」


「アズサの発言は意味がよくわからないことも多いですし、実験台として生活していたなら人間というものに恨みを持ってる可能性だってあります。

表の人間とか、そんなの関係なく殺そうとしてくるかもしれないじゃないですか」


「あぁ…。引き取るって決めた時、如月さんにも同じことを言われたよ」




親則は苦笑し、机に置いていたコーヒーを手に取り、一口含んだ。


そしてコトリとカップを置くと、再び話を始める。





「そうだね…。決め手は、秋信さんと往焚さんかな」


「え?」





私と、璃久?

アズサを引き取る決め手が?




でも、私と璃久には梓という人物との接点はない。

女性で梓、という名前の人は数人知っているが、全員子供ではなく大人だった。




「…秋信さんも往焚さんも、裏出身って言ってたよね」


「ええ」


「裏って聞くと怖いイメージが多いし、未知の部分も多いけれど…。

でも、それだけじゃないよなって、2人と話すようになってから思ったんだ」


「…………」






驚きすぎて、思わずポカンとした表情を浮かべた。


まさか、親則がそんな風に思いながら俺たちと接していたとは…。

思いもしなかった。





「それに、梓が言ったんだ。

引き取る引き取るないで如月さんと揉めてた俺に、"僕は、君以外の人間の場所には行きたくない"って」


「え…?」


「そこまで言われたらさ、この子は俺を殺したいわけじゃないんだろうなって思うでしょう?」





親則は笑った。



つられて俺も笑った。





とんでもない子を拾ったものだな。






でも、親則は幸せそうに笑っていた。





そこに、後悔は一つもなくて。





胸が少し、痛くなった。






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