第75話
〜・〜
現在 幸架side
「………ぅ…」
全身が痛い…。
うっすらと目を開けると、冷たい石で造られた床と壁が見えた。
立ち上がろうとしてジャラリという金属音が響く。
ぼんやりと自分の状況を確認すると、両腕は壁に固定されているのがわかった。
そして両足にも
もう少し周囲を見ようとして、首にも冷たい感触がした。
首も枷で壁に固定されてるらしい。
目の前には鉄格子。
……地下牢か。
何故ここにいるのかとか、
今どういう状況なのか。
ここに俺を連れてきたのが敵なのか味方なのか。
でもそれより気になるのは…
チラリともう一度周囲を見回す。
目の前の床や壁に、いたるところに血がべったりとついていた。
「……あぁ…。そう。起きたみたいだ。
報告してくる。お前は見張り頼んだ」
「了解」
状況を頭で整理していると、少し遠くの位置から小さくそんな会話が聞こえてくる。
モニターされてる…?
チラリと天井に視線を向けると、カメラらしきものを見つけた。
それで俺の意識が戻ったことを確認したようだ。
軽く力を入れて片腕を動かすと、再びチャリ、と鎖が鳴る。
…………思ったより
拘束するなら、もう少しちゃんとしたものを用意するべきだろうに。
「幸架」
ゆっくりと顔を上げる。
足音がしていたから、誰かが近づいてきているのはわかっていた。
でも、予想していたような知らない人間の声ではなかった。
「…………開理、さん?」
「よかった。………意識、戻ったか」
「………………」
鉄格子越しに白衣の男が立っていた。
暗くてよく見えないが、声でそれが開理だということはわかる。
開理の後ろには数人、銃をいつでも撃てる状態で控えている人が5人ほどいた。
開理と一緒にいるということは、たぶんルナの下級構成員か。
ということは、この場所はルナ関連か。
何でこんなところに…。
「……体の調子は、どうだ?」
「………………」
「………本当は治療してやりたいんだけどな。
近寄るなって命令が出てる」
「………………誰から?」
「それは、……木田だ」
「………………」
ここにくるまでの記憶もないが、ここに来る前の記憶も曖昧だ。
俺は何をしてた?
どこにいて、どこに向かっていて…。
というか、今はあれからどのくらい時間が経ってる?
意識がはっきりしてくればはっきりするほど、頭の中が混乱し始める。
これではいけないと、そっと息を
軽く目を閉じ、全身の力を抜く。
目を閉じて黙り込んだ俺を、開理も黙って見つめていた。
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