第54話




「お姉さん」


「(どーなってんだよ…)」





私のそばにしゃがんだアズサに口パクで訪ねる。

もう何が何だかさっぱりわからない。




目の前にいる集団も困惑しているようだ。

仲間内で何やら話し込んでいる。



まぁ、これから連れ去ろうという本人目の前に悠々と話ができるのは、私が逃げられる状況にないのが丸わかりの格好をしているせいなわけだが。





「なんか、説明してくれなさそうだね」


「(アズサはなんか知ってんのか?)」


「まぁ…。

お姉さんの言う通り、僕は全部知っててお姉さんに声かけたわけだからね」


「(何がどーなってこうなったんだ?)」


「まぁ、簡単にかいつまんで説明するとね…」







待ち合わせ時間に、幸架は情報屋と接触したらしい。

もちろん、幸架は女装なんてしない。



さすがに相手も激怒したらしいが、数分後には何故か先方が納得。

ホテルに向かったらしい。




で、そこからだ。





何時間経っても出かけた情報屋が帰ってこないと心配したお得意先──つまりこの目の前の集団が所属してる組織が、ホテルに確認しに行った。



そこにいたのは…。



廃人同然になっていた情報屋1人だったという。








防犯カメラに、幸架が出た映像はなかったとか。

でも入った映像はあり、待ち合わせ場所に幸架が行ったことも確実。




で、幸架をとらえようと動いたが見つからず。




幸架の情報を吐かせるためと、人質にするために私の捜索を始め、目撃証言を頼りにここまできた、と。






「(待て。廃人寸前ってどーゆーことだよ)」


「なんかねぇ、ずっと笑い続けてる上に目がど

こも見てない感じだったらしいよ?

で、"いいねぇいいねぇ、アヒャヒャヒャ!"的なことしか言わなくなっちゃったらしいよ」



「(幸架…何したんだよ…)」






思わず頭を抱えた。

というか、どんな方法で納得させたんだか。






「おい。とりあえず連れてくぞ。

見られてるし、そこのガキも連れてく」


「はーい、了解〜。

ってことで、お二人さん我慢してね?」





アズサから話を聞いたそのタイミングで、この集団の話し合いも終わったらしい。


やばいと思って顔をあげた時には時すでに遅く、私は担ぎあげられ、アズサも拘束されてしまった。





「(離せっ!そいつ関係ないだろ!)」


「こいつ何言ってんだ?

っていうか、声も出てねぇやつ拷問してどうしろっていうんだろうな〜」


「たしかに。どうしましょうねぇ…」






今現在困っているのは私だけではないらしい。




この場で余裕そうな表情を浮かべているのはアズサだけだ。




というか、お前はなんでそんな余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)なんだよ!


逃げろや!

何故逃げない!

というかなんで普通に縛られてついてきてんだ!


抵抗しろよ!抵抗!


少しくらい努力しろぉぉぉぉ!!!






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