第48話



「(で?)」


「ん?」


「(ネタバラシ、してくんねーの?)」


「あぁ…。

お姉さん、会話中ずっと耳に意識集中してるでしょ」


「(……?)」


「もちろん視線だって晒さないから、探り合いは慣れてるんだろうね。

でもよくよく見てると、相手の動きより相手の話す声の方に意識傾けてるなって気づいたんだよね」


「(なるほど。………それで?)」


「それで、一体何をそんなに真剣に聞いてるんだろうと思って会話続けてた。

で、19歳って俺が言った時なんだけど」


「(うん)」


「お姉さん、俺が普通に答えたことに驚いてたけど、その答えを嘘だなんて一ミリも思ってない様子だったよね」


「(………あー…)」







確かに、幼さの残るアズサの容姿はとても19歳には見えない。


ゲーム開始時に15とか16じゃねーの?と聞く程度には童顔なのだ。




それなのに、私は一度も19歳だと言う返答を疑わなかった。







バカだな。








「嘘を暴く方法ってのもいくつかあるけど、

ずっと耳を傾けてる様子のお姉さん見てれば

何聞いてたかたいていわかるよね」


「(………)」


「僕の心音、聞いてたんじゃない?」


「(そんな芸当ができるとでも?)」


「できるよ。お姉さんなら」


「(なんでそう思う?)」


「お姉さんが俺の嘘に反応するから」


「(……は?)」







またアズサはクスクスと笑っていた。


なんか、調子狂うな。




もうあっけにとられて呆然とすることしかできない。








「心音を頼りにしてるかもしれないって考えた時、わざと心拍数が上がるように何度か試したんだよね」


「(…………)」


「ほんの一瞬だけど、そういうときお姉さんが軽く納得した表情をするんだ」


「(…………)」


「で、逆に嘘ついてるのに心音上がらないようにしてみれば、案の定お姉さんは気づいてない。

だから、お姉さんが心音で嘘を見破っているのは間違いないってわけさ」



「(………なるほど。

私も相当デタラメな部類だと思ってたけど、あんたもそーとーだな)」






まぁね、とアズサはやっぱり笑っていた。

ほんの一瞬、自分でさえ意識せず、知らなかったことを見逃さずにそこから情報を得ていたと。




とんでもない人だ。









「(というか、嘘で心音上がらないようにとかってどうやればそんなのできるんだ?)」


「簡単簡単。

その嘘を本当だと思い込めばいいだけだよ」


「(………????)」


「うーん…

例えばトランプ当てゲームでさ、自分が引いた数字が2だったとするでしょ?

そうすると、人ってのは2って数字と言葉に過剰に反応するようになる。


だから、自分が引いたのは別の数字、1だとか思い込んでしまえば、2に反応することはなくなるのさ」


「(理屈はそれでいーかもしんねーけど、もし全部の数字がアウトならどうやってあんたは隠すんだ?)」


「そういうときは、自分が引いた数を知らないと思い込めばいい」


「(……………)」


「それも簡単だよ。

誰かに頼まれて引いただけで、見はしたもののその数字は自分のものじゃない、自分はこのゲームに関係ない、とでも考えておけば楽勝楽勝」



「(…………あんた、そーとーデタラメだ」





理屈ではそうなのかもしれないが、実際にできるかどうかは別の話だ。


そりゃどーもとアズサは不敵に笑う。

もうなにもかも彼に隠せる気がしなかった。







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