第45話
………ってか、あれ?
「(如月と木田、知ってんの?)」
「そりゃ、一応生まれは裏だから。
この企画始まったのも数ヶ月前からだし。
それまではルナの実験台モルモットだった」
「(モルモット…)」
「そ。まぁ別に特別エグいものだったわけでもないでしょ?
お姉さんだって裏の人間なら、そのくらい経験してきたんじゃない?」
「(…なんで私のことそんなにわかるんだ?)」
「普通に考えてみなよ。
表社会の人間がそんな体で、声も出ない状況になる展開なんてある?」
「(…………ねーな)」
「でしょ?
考えなくてもわかるよ。
それに、ルナと蜘蛛の最高司令官を呼び捨て。
そうとう親しい間柄なんだろうね」
「(頭いーんだな)」
「お姉さんの頭が悪いだけじゃない?」
「(………………)」
まぁ、初歩的なミスをしている自覚はある。
だから何もいえない。
男子高校生──アズサは、特にこの場所で何かする予定だったわけではないらしい。
木に寄りかかってぼんやりする以外、なんの動きもみせなかった。
「(………私のこと、聞かねーの?)」
「聞いて欲しいなら聞くけど?」
「(……………いや。私だけ一方的に聞きすぎたなと思っただけ)」
「ふーん…。じゃあ暇だし、遊ぶ?」
「(私、体動かせないけど?)」
「会話できてんじゃん。
だから、簡単なゲームしよ」
「(………いーけど)」
アズサはにっこり笑っている。
楽しそうだ。
「んー。何がいいかな。
ねぇ、お姉さん。頭脳勝負でもしようよ。
どんなのがいい?」
「(んー…。私そんなに頭良くないから、お手柔らかに頼む)」
「そうなの?頭良さそうに見えるのに」
「(…………)」
さっき頭悪いとか言いやがったくせに。
少し苛立ちながらも、笑ってかわした。
「んー…。
あっ。じゃあさ、お姉さんは僕の年齢当ててよ」
「(高1ってことは16とか15じゃねーの?)」
「だから、僕は裏社会のモルモットだったわけだよ。
15歳くらいのやつもいるけど、30とか40のやつもいるからね?」
「(あー、なるほど。わかった」
戸籍のない子供を救うこの企画が始まったのは今年だ。
アズサは高1だと言ったが、まだ高2、3はいないのだろう。
新設校というわけだ。
裏の世界に生まれてきた、それも実験用モルモットとして生きてきたのなら、学校に行ったり教養を受けていた人間は少ないだろう。
だから、30代や40代で高1として勉強を始める人も少なくはない。
もっといえば、30代40代でやっと小学校でやるような勉強を始める人もいるということだ。
「(アズサはどーすんだ?)」
私のゲームが決まったところで、アズサは何を当てるのか?と訪ねた。
アズサは私をじっと見つめ、考える。
「僕は…そうだね。
お姉さんが幸せになれたら、僕の勝ちにしようか」
「(は?)」
アズサは、にっこり笑って"ゲームスタート"と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます