3、じゃまじゃま玉入れ

第41話

 

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


東区 桜祭り3週間前





重い体を引きずりながら、何とかソファーに辿り着いた。



今は一時休憩であって、終わりじゃない。





というか悪魔の所業を実行した本人は、スヤスヤと穏やかに眠りこけている。



腹わた煮え繰り返るので、あとでマジぶん殴ることにしよう。







さっきシャワーを浴びてきた。

だから今は、髪も濡れたままだ。


乾かすのも億劫で放置している。





というか、生傷が絶えない。

シャワーを浴びるたびに悲鳴をあげたくなる。






加減を覚えろ、このバケモノめ。

1ミリたりとも人間の心というものは存在しないのか?

というか理解できないのか?




同じ人間だろう!







…なんて言葉が通用する相手ではないことくらい理解してはいる。



なぜ理解できるか?

そりゃあ大人だから。

そう、大人だから。


あいつよりは大人だから。





大事だから何度も言う。

お・と・な・だ・か・ら!






あいつと行為に及んだ後、無事でいられた記憶がない。


本当に、ほんっとうに、

ほんっっっとうううにロクなことがない。







「…………何」


「…………出て行ったと思った」


「出て行っいいなら出て行くけど?」


「…………」





さっきからじっと見つめてくる視線に声を投げかければ、珍しく弱気な声が返ってくる。



出て行ってもいいのかと言う質問には答えず、そいつは後ろから抱きしめてきた。






と言っても、自分のためだろう。


不安で仕方ないのだ。





どこにも行ってほしくないから。









「…………嫌だ。行かせない」


「だと思った」


「……………」


「……………フフッ」


「…………何だ」


「いや、…」







本当に珍しい。


いつも傲慢で、自信家で、誰が何と言おうと曲げないくせに。



むしろ強引に思う方向へ曲げてみせるくらいするくせに。






「珍しく可愛げのある態度だなと思って」


「………………へぇ」








あ。嬉しくなさそう



というか、…………やばっ。


お、お怒り?

これは、…もしかして、地雷…。







「休憩、もういらねぇだろ」


「いるに決まってる。

何時間やってたと思ってんの」


「さぁ?そんなのいちいち考えてるわけねぇだろ」


「待て。待て待て待て待て待て。

少しは考えよう。そう、考えよう。

得意だろ?考えること」


「それはお前の方が得意だろ」


「………本当にそうならここまで悩まずにすんでたと思うよ、うん」


「なら今回はお前の負けってことで」













──大人しく抱かれろ


















やっぱりそうなるか。


というか、抱かれっぱなしは嫌なんだが。





なぜここまで好きかって蹂躙されなきゃならんのだ。


いや、それならばこちらから仕掛ければいいのでは?






「……というか」


「……?」


「逆に抱かせろよ。

で、涙ぐんで喚いて叫びながらやめてくださいーって嘆きながら懇願する姿見せろ」


「できるのか?」


「でき………る、はず」


「やったことねぇだろ」


「ないけど?なくたってできるはずだけど?」






ふふんと胸を張って見せると、クスリと笑われた。




またバカにしやがってるな?

こっちはなぁ、本気なんだよ!


いかに自分の休憩時間を確保するかで。









「さぁさぁ、抱かせろ。

抱かれ続けるのはもうそろそろ飽きた」


「とか言いながら少しでも休みたいだけだろ」


「仕方ないだろう!

避妊してたって孕まされそうな勢いじゃないか!毎回毎回恐怖で恐怖で仕方ないこっちの身になれよ。

というかそんなに孕ませたいなら自分が孕めよ」


「無茶振り言うなよ」


「お前ならいけるだろ」


「無理」










そうして、ようやく勝ち取った攻守交代。







はてさて、どうなることやら。








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