第27話



〜・〜


現在 璃久side





「狙撃ポイント到達。標的確認」


『了解。合図で狙撃してくれ』


「了解」






標的である快楽殺人鬼にライフルを向け、合図を待つ。


逃げ足の早いこいつは、警察官が到着した時にはもうすでに現場から消え、足跡さえ辿れないというやっかいな殺人鬼だった。




お手上げ状態の表警察がルナに援護を依頼し、蜘蛛経由でルナがそれを引き受けた。


で、ルナの下級構成員とともに仕事を依頼され、今に至る。





幸架は別件の仕事中だ。

今日は蜘蛛の千春の手伝いを頼まれたとか。







『標的、目的のポイントに到達。

標的は次の被害者を決めたようだ。

すまないが、被害が出る前に狙撃を頼む』



「了解」






狙撃許可と同時に発砲した。


こちらの存在に気づいていなかった殺人鬼は、私に背中を向けている。

その延髄(えんずい)を撃ち抜くことなど容易。




殺人鬼が倒れ、ピクリとも動かないのを確認して報告をした。






「標的死亡確認。

同時に標的の仲間らしき人物4人確認。

次の行動の指示を」



『了解。確認する。

あとはこちらに任せてくれ』







通信が切れると同時、待機していた組員が殺人鬼の死体に駆け寄っていく。


また別の組員が、殺人鬼の仲間らしき4人と正面衝突を始めた。




任務終了を言い渡されているし、ここでやめてもいいわけだが…。



私はライフルに弾を詰め、再び構えた。





1人大柄な男がいるのだ。

その対応をしている組員が押されている。



動き回る大柄な男に標準を合わせ、戦闘の成り行きをじっと見つめる。




今日は微風。

気温は25度。

曇りで見晴らしは悪く、湿度が高い。




大柄な男が組員を組み伏せた。

それと同時に男が持っていたナイフを振り上げる。





それを視界に映すと同時に発砲した。





発砲許可がない時に殺すことはできない。

だから、男が持っているナイフをそれで弾(はじ)く。



突然の狙撃に動揺した男を、増援にきた組員3人が捉(とら)えた。


他3人の仲間も無事拘束できたようだ。





『こちら阿部。任務完遂。

…すまない。助かった』


「了解。問題ない。

他に仲間がいる様子はないから、俺は少し休んでから戻る」


『迎えの者を向かわせよう』


「いい。そのまま帰る」


『あ、いや…、………わかった。

今回は本当に助かった。ありがとう。

報酬はいつも通りに』


「了解。お疲れサン。

またのご利用、お待ちしておりまーす」







通信機を切った。

さらにルナとの接続も切り、電源を落としてポケットにしまう。



そのまま壁に寄りかかり、ふぅとため息をついた。






ズリズリと壁に寄りかかりながらしゃがみ込んだ。



さすがに仕事を女の姿でやるのは厳しい。

だから、仕事の時は相変わらずの男装をしている。




もうすっかり馴染んでいるはずなのに、最近素でいることが多かったせいか、違和感がある。


何より、サラシがきつい。





ゆっくりと目を開け、自分の両手を見た。






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