第23話
駐車場へそのまま進み、3人を後部座席に座らせてから助手席に乗り込んだ。
幸架はすでに運転席に座っている。
私が乗り込むと同時に声をかけ、発車した。
「すみません。騒がせてしまって…」
「いやいや!そんなことないですよー!
それにしても、幸架さんってモッテモテなんですねー!」
「あ…い、いや、そんなことは…」
「いえいえ!だって、あの受付のお姉さんだけじゃなくて、私が数えただけでも6人は幸架さん見てましたよ!」
「え…」
興奮気味に話す凪流の言葉に、幸架の顔が引きつった。
見られている自覚はあっただろうに、そんな顔をする必要もないだろう。
私にとってはいつものことだったため、頬杖をつきながら車窓を眺めた。
「そういえば、お花見行った時もけっこう注目されてましたよっ!
隠れ森に走ってく幸架さんのこと、みんな振り返って見てましたから!」
「凪流…お前、もうちょい落ち着けよ」
「えー」
「というか、璃久さんも注目されてたよな」
「は?」
思いがけず自分の名前が上がり、顔を上げた。
「イケメンの隣にいる子可愛いって話してるやつ、けっこういたぜ?」
「それ、私じゃないだろ。
確かに幸架はイケメンだけど、私は長身な上この顔だし。…かわいー部類じゃねーよ」
「そうか?俺は可愛い方だと思……。
……あ、いやっ、えっと、違っ」
「?」
突然焦り出した奏多。
振り返って見ると、青ざめた表情であたふたしていた。
もしかして、彼女である凪流の目の前で別の女を褒めたからだろうか。
でも凪流は笑っている。
悠も、口元を手で押さえて小刻みに肩を震わせている。
「……?どした?」
「あっ、いや、……なんでもない!
そう、なんでもない!」
「そーか?」
よくわからないやつだ。
幸架は何かわかったかもしれないと思い、チラリと幸架に視線を向ける。
相変わらずの外向け笑顔を浮かべ、運転している。
そういえば、幸架はいつも笑みを浮かべている。
その方が話しかけやすい雰囲気を作れるからだろう。
真剣な話をする時も、笑みは浮かべていないにしろ、柔らかい雰囲気を作るようにしていることは伝わってくる。
私にはそんなことはできないので、いつも感心する。
でも、なんか…。
いつもと違くね?
「幸架?どーした?」
「何がです?」
「んー…」
何が?と言われるとわからない。
なんだろう。
…………………。
あ、わかった。
「今機嫌わりーの?」
「え?」
「ま、モテるのも大変だしなー。
こういうことだって初めてじゃねーくらいの頻度だし。
もーちょいダサい格好してみれば?」
「あ、あぁー…」
まぁ、あんな騒ぎにまでなったしな。
気持ちのいいものではない。
機嫌悪くなるのも当たり前だ。
これで幸架が女嫌いにならなければいいが…。
なんて、心配は必要ないか。
だってこいつには、好きな人が…。
愛する人が、いるのだから。
「そう、ですね。
最近素のままで目立ちますし、そろそろ変装した方がいいかもしれません」
「そーしろそーしろ」
うんうんと頷くと、幸架はクスリと笑った。
幸架の赤毛は目立つ。
変装は必要だろう。
「そういえば…」
と、そのタイミングを測っていたのか、躊躇いがちに悠が口を開く。
チラリと視線を向ければ、私に話しかけているようだった。
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