第22話




「何がどうなってこうなってんだよ」




コツコツ、と足音を響かせ、今度は木田と開理がエレベーターから降りてきた。


愛菜と愛菜をかばった男性組員が青ざめる。




もはや、私が木田の娘であることは蜘蛛とルナの中では有名な話になってしまっている。







ルナ最高司令官に、慈悲はない。










蜘蛛の如月ほどやさしくて甘い最高司令官など、ほとんどいないのだ。

まして、木田誠より冷徹に断罪する者もいない。




そして、元凶である幸架も彼女に肩入れはしない。


幸架は、私や湊意外に情をかけない。


理由は聞いたことがない。

けれど例えどんなに仲良くなったとしても、私と湊が危険になると判断すれば、バッサリ切り捨てる。






如月がどう答えようか迷っていた。

返答1つで、この場にいる組員の命が終わる。



木田は私が批判されたからと言う理由では動かない。




恋愛という項目で何も見えなくなっている人間なんて、微塵も使い物にならないだろう。


そう言って、切り捨てるのだ。







愛菜は、もうすでに真っ青な顔でガタガタ震えている。

恐怖のあまり、今にも嘔吐してしまいそうな表情だ。




「おい」




愛菜の方がびくりと跳ねる。

決して怒りを含んでいるわけではないその声は、しかし最高司令官としての圧力を持って発される。




木田のそばにいる開理も、これからの行動に支障が出ると判断すれば、手助けなどしない。


この場にいる人間の中で、彼らの味方は如月だけだ。

そんな如月も、どう返答しようか迷っている様子だった。


木田に嘘は通用しない。



つまり愛菜とこの男は今、ツんでるのだ。











でも。













「おい、セクハラ親父。

なんでもねーよ。

受付のお姉さんが可愛すぎて幸架が誘惑しただけだ。


で、可哀想なことにお姉さんがそれに引っかかったってだけ。

そんな威圧されたら誰も喋れねーだろ」


「ブフッ!……なんだ?浮気か?幸架」


「え………え⁉︎

な、何でですか!というか誘惑⁉︎

してませんよ⁉︎」


「はぁー?あんな色目つかってたくせに?

そりゃーねーよ。

な?おねーさん」


「あ………」









信じられない、と愛菜の瞳が見開かれる。


愛菜の傍にいる男性組員も、この場を見ていた人間全てが私に驚愕の瞳を向けてくる。






「じゃ。私ら3人送り返さなきゃだし。

そろそろ帰るわ」


「あぁ。……気をつけろよ」


「はいはい。

そーゆーあんたの方こそ、気ー抜いて殺されんなよー」


「そんなスカスカ頭は楽生と如月だけでいいだろ」


「「なんだと⁉︎」」






幸架の手首を掴み、あわあわとしていた奏多、凪流、悠を誘導して外に出た。






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