第16話



イケメン酔いした凪流は奏多に担がれ、そのまま25階の奥へ進んで行く。


この25階は医療班が使っているフロアらしい。



「あの、木田さん」


「何だ」


「埋葬するっておっしゃっていましたが、どこに埋葬するんですか?」


「………咲夜とジュンがいるところがいいんじゃねぇか?」


「あぁ…。なるほど…」



あの2人には、戸籍はない。

出生記録もなく、生きた記録もない。


湊はBKや影、フリーランスキラーとして有名ではあったが、物的証拠が何も残っていない。



ゼロに至っては噂のみだ。



通夜をするには知り合いは多くとも、2人をよく知っている人なんて誰もいない。


だから、火葬したのちに埋葬することくらいしか、彼らへの手向けはできないのだ。





「…………ここだ」


「お?全員お揃いか?」



扉の前に着いたと同時、如月と大地達6人がその扉から出てきた。

最後のお別れをしにきたのは、みんな同じようだ。



「うわ…能天気チャンチャラ頭…」


「ちょっと待てー!

開口一番それか⁉︎なんで俺の扱いだけ雑⁉︎」



うげーという顔をした木田と、まるで何も見えていないかのように虚空を眺める開理と私、幸架。


後ろからも、ぼそぼほと会話が聞こえる。



「おい、凪流。なんで騒がねぇんだよ」


「だって…開理様と誠様に比べたら、普通じゃない?」


「………慣れだね。奏多、凪流がイケメンに慣れてきてるよ」


「え。イケメンって慣れるもんなの?」


「鼻血出すくらいだからね。

きっと耐性がつくような毒だよ」


「イケメンって毒だったのか…」




3人の会話に、私は思わず笑ってしまう。


なんつー会話してんだよ。

というか、イケメンが毒って…。



「………ま、まぁ、俺たちも仕事あるしぃ〜?

仕事戻るしぃ〜?ごゆっくり〜」


「またね、秋信、往焚」


「はい。お仕事、頑張ってくださいね」




途中、晶が私と幸架に手を振った。

彼の隣には、深春がいる。


最近よく一緒にいるのを見かけるが、何か進展でもあったのだろうか。




「…………入るぞ」




木田が扉に手をかけた時、全員の雰囲気が少し緊張したものに変わった。







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