第36話



「……千春、秋信さん」





深雪も何か掴んだらしい。

千春と深雪に近づく。





「冷戦が続いてたここの地域と、戦争中だったここと、内乱が続いてたこことここ。

あと、ここの過激派テロ組織が休戦宣言した」


「………休戦?なんで?」


「それは…わからないけど…」


「ほかに何かありましたか?」


「えっと…。

休戦宣言したところ全てが国際犯罪対策本部に協力したいって願い出てるみたい。

それを了承してAI討伐に本格的に乗り出してるみたい」


「……それはおかしいですね」


「え……?」


「……何が?」






何が起こってるんだ。



いや、考えろ。

わかるはずだ。




湊ほどの知能はないが、璃久と2人で生きてきた。

考えろ。



絶対に何かわかる。







「……俺たちは今、国際犯罪対策本部の依頼でここに集まって動いています。

協力者を募って動いている、とも」


「……そうだね」


「それなのに、なぜ俺らは俺らだけで動いているんでしょうか」


「え……」





カチカチと深春のパソコンを操作して覗く。



この違和感は、なんだ。






「休戦宣言したところ全て、と言いましたね。

それなら、なぜ俺たちには何の報告もないのでしょうか。


そして、俺らのように海外でも個人的な協力者を募っているはず。


それなのになんのコンタクトもない。

そして今頃気づきましたが、澤部さんは俺たちに何も指示していきませんでしたね」


「………あ」






湊がなぜ晶を眠らせてタバコを吸いに行ったのか。

なぜ動かないのか。





…そういうことか。



湊はやっぱりすごい。

いつも俺たちの先の先を読んでいる。




パタンとパソコンを閉じる。

それなら千春と深春を見た目返した。




「……作業をやめましょう。

今情報収集をすれば、AIに気づかれる可能性が高くなるだけです」




パソコンを全てシャットダウンさせた。



璃久は大丈夫だろうか。

問題ないだろうが、どうせやることもないし。




迎えに行くか。








「……秋信さん」


「はい」





カチリと銃口が向けられた。




私は笑みを浮かべながら、両手を上げて2人の方を向く。




俺に銃口を向ける千春とナイフを構えている深春。






「……ごめんね。大人しくしてくれる?」


「……なるほど。ここに留まらせたかったわけですか」





私たちが動くと何か不都合があったのだ。

情報収集をする事で、"仕事をしている"という状況を作る。



役割も分担し、ちゃんと調べていると思わせるために適当な情報を入手し、私に報告した。





「はぁ……」






思わずため息が出た。

なんてくだらない。


まぁ、こいつらもバカだ。

適当な情報を報告したはずが、そのせいで俺にバレるなんて。


まんまとはまった自分もバカだが。





「……何?」





不機嫌そうに千春が眉を歪める。

深春はナイフを構えたまま、表情も変えずにこちらを睨んでいる。



これを見れば、こいつらが誰かもわかる。





「……俺たちは確かに湊さんの足元にも及ばないです」





適当な机に浅く腰を預け、上げていた両手を下げた。


久々の高揚感を必死で抑える。




「でも、まさかこんなに見くびられているとは思いませんでした。

ーーーー……それ、下げろよ」





カンッ!と甲高い音を立てて千春の銃と深春のナイフが弾かれた。



何が起こっているかわからない2人に向かって走る。




千春の足を払って転ばせながら深春を押し倒す。



スルリと袖からナイフを滑らせ、深春の首筋に当てる。





「…さて、千春さん。深春さんを犠牲に私を殺せば?」




ナイフを当てたまま深春の首を片手で締め上げる。


千春の顔が歪む。




深春は気道を確保しようともがきながら弾かれた自分のナイフを見た。

その側に落ちているコインと刃が折れたナイフ、壊れた銃を見て目を見開く。






それを見ながら、自分の口元が緩むのがわかった。



私が"2分の1しか"力が使えないからって、

調子に乗りすぎんなよ?

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