第17話



「あ、湊さん。もう一つあるんです」


「なんだ?」


「どうやら、パソコンや携帯電話が使えなくなっているらしいんです」


「………じゃあなんでお前らは使ってんだ?」




パソコンをいじる幸架と璃久を見ながらそう言う。

どう見ても操作しているようにしか見えない。



しかも、さっき幸架が携帯を操作しているのも見えた。




「そこなんですよね…。俺らは使えるんですよ」


「……意図的に俺らに情報を流してるってことか」


「たぶんそうだと思います。

…そうなれば、無名組織を壊滅させたのが俺たちだということは、もうバレているでしょうね」





何のために俺らに情報を流しているんだ?


俺らの場所がわかっているなら、なぜ仕掛けてこないんだ。


俺らだけが情報を得られるようにされてるということは、やはり狙いは俺たちのはずだ。

それなのに仕掛けてこないのは、ここに入って来ている情報を操作されているのか?



「あと、コンピュータを使えなくなる前に国際犯罪対策本部がコンピュータウィルスを流したようです」


「AIに向けてだね。どこにいるのかわからないから、自爆覚悟で流したらしい」



幸架と開理がパソコンを操作しながら別の話を始めた。

パソコンはハッキング中の画面を映している。



「ですが、AIの方が上手だったようです。

"本部が放ったウイルスを殺すウイルス"を先に作成、放流していたようです」


「そう。本部がウイルスを放った瞬間に消滅きたらしい」


「……全部読まれたのか」


「あー、っと、外の様子も見てきたぜ。

交通機関全部ストップしてる。

信号も機能してなかったぜ。

もう街中パニックだ。

会社も学校も政府機関も機能してねーよ。

警察と対策本部はなんとかコンピュータ使えるように確保してるみてーだけど…」




色々な情報が入りすぎている。

そろそろ現状をまとめた方がよさそうか。



「…全員作業やめろ。

璃久、なんか適当にコーヒーとか入れてくれるか?」


「了解」




全員がしていた作業をやめ、ソファに座る。


往焚はコーヒーを3人の前に、紅茶を俺の前に置いてから腰掛ける。




10分ほど、無言で各々飲み物を飲む。

作業で疲れた上、今ある情報の整理を各々しているのだろう。

俺はそこで声を発した。


「……現状確認」


ポツリ、と呟くと全員の視線がこちらに向き、頷きあう。


俺は紅茶のカップを置き、背もたれにもたれかかった。



「"影"を名乗るAIが動き出したのは2日前。


最初の予告は3カ国のトップを事故死させるという内容だ。

予告から30分後、予告通り3人は事故死した。


次の予告は、東アジアの紛争をやめさせるという内容。

さらに、紛争している5組織のうち主だった過激派2組織のトップの殺害予告もされた。


期限は1週間以内と予告されてるが、予告から一日たった現在すでに紛争は沈静化。


そして、現在コンピュータ、交通機関等がジャックされたせいで街はパニック、と」


俺は時系列順に今ある情報を告げる。

それに対して幸架が推測を話す。


「……はい。

そして、AI──影は人間に対してかなりの嫌悪を示しています。ヘドがでる、と。

目的は、人類への復讐、と考えるのが妥当かと」


「……いや。待て」




目的は復讐、と言われたところで何かがひっかかった。



なんだ、この違和感は…。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る