第8話

ゼロ side



「湊、もうすでにさっきのやつ、かなり情報が回って、き…てる、…らしい……え…」



私を抱き上げている男──湊に何か言おうとした開理が、私を見て動きを止める。

その様子を見た2人も私の方に振り返った。



「あ、悠。お久しぶりです」

「うっわ…。湊さん、やりすぎだろ…」

「えっ、と、…ゼロ?悠(はるか)?…なんでそんなに傷だらけなんだい?」




いろんな質問をされたら、答えるのに困るじゃないか。

一つにまとめてから言ってほしい。


まぁ、私は優秀だから?全部ちゃんと答えてあげますけど?




「えっと、幸架さん、お久しぶりです。

璃久さん、それには激しく同意です。

この鬼畜を1発…いえ、可能な限り顔を重点的に殴ってください。

開理さん、悠とお呼びください。

この傷は、全部あなたの息子さんがやったものですよ。

もう少しちゃんと教育しておいてください」




言い切ったぜぇい!

疲れたがな!でもちゃんと言ってやったぜ!


心でドヤ顔を決める。



開理の顔がジトーッと湊を見つめるが、湊はどこ吹く風である。


涼しい顔でソファーに腰かけ、私を足の間に座らせると、後ろから抱きかかえた。



いつも思うが、なぜこの体勢なんだ。




「……湊。みんなの前でいちゃつくのはやめなさい」

「別にんなことしてねぇよ」

「じゃあ、俺たちに自慢してるのか?

可愛い彼女を見せつけているのか?

俺はそんな風にお前を育てた覚えはないぞー!」



おおおおおおー!!

開理!

もっと言えー!

いけいけー!




「そうだな。俺もお前に育てられた覚えねぇわ」

「………………」




湊や。

それは、かなり、ドギツイぞ。

ブラックジョークならぬブラックでしかない。

完全な地雷だ。

ほら、開理さんガッカリしてるよ…。



「ご、ごほん」



幸架はわざとらしく咳払いをした。



「で、では。とりあえず悠。これ見て」



幸架は携帯をテレビにつなぎ、さっき街に出た時に流れたという映像の録画を見せてくれた。





〜・〜




「へぇ…。大変だったね」

「あはは…。えっと、それで今、ネット上にいろんな情報流れてるんだけど、さっき国際犯罪対策本部の方の情報が更新されてましたよ」



秋信はカチカチとパソコンをいじりながら話す。

それを開理が引き継いだ。



「まず、これが通信で映って場所で、到着した隊員が撮った写真だ」



テレビ画面に写真が映し出される。


椅子、三脚、カメラ。

誰もいない場所を映すように設置してある。


部屋は四方コンクリートで、窓は一つ。




「次に、世界の信号を全て赤に変える、と影が言っていたやつだ。

どうやら、本当に世界の信号があの時間赤に変わったらしい」




twitterやSNSから取ってきたらしい映像が流れる。


アメリカ、韓国、ロシア、イタリア、インド。

そのほかにもいろんな場所の映像があるが、すべて突然の赤信号によりパニックに陥っている。



「あと、あの映像はやっぱり同時に各国に流れていたようだ。

もちろん現地の言語でな。

次だ。

さっき15時になった。

A、B、C国のサーバーに侵入して、さっき交換された情報の中に、3国のトップが事故死したことが確認された」



またテレビに写真が映る。

写真は3つ。


炎上している車、横転した電車、墜落したらしいヘリ。



「予告を聞いてから逃げてどこかに隠れようとしたらしい。

その時に、って感じだったみたいだ」


「なんか、影が故意に事故を起こしたっつーか、予言されたような気分だな」




気味が悪い、と璃久が顔を歪ませた。



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