第1章 Destroyer

ある男の記憶 Ⅰ

第1話


「なぁ」

「なんだ?」

「俺らでさ、研究組織、作んねぇか?」



ずっと尊敬して憧れていた人からの誘いに、心が舞い上がった。


そんな人が、自分に期待してくれることが嬉しくてたまらない。


考える前から、返事は決まっていた。



「俺でいいのなら、ぜひ」

「おー。お前のその柔軟な頭脳を頼りにしてるわ」


眩しい笑みで、彼はにっこりと笑った。


もし時間を巻き戻せたのなら、俺はこの時どうしていただろうか。


いや、きっと同じことをした。


なぜなら、同じことをしなければ、"彼女"には会えなかったはずだから。


酷い、あんまりだ、なんて言われるような"死に方"をしたが、俺は何も後悔していない。



死ぬ瞬間、俺を目に焼き付けるように見つめてくれた瞳を見て、そう思ったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る