第29話 10年前の真実

〜10年前〜


「………そうだな。

なら、もうすぐ死ぬ俺と、賭けをしないか」


俺は、にやりと笑った。

本当はうまく取り合ってくれる気なんてしない。

たぶん、俺がそう思ってることさえこいつはわかってる。

「何賭けるの?」

「あー、そうだなぁ…。

お前が勝ったらお前の望みを俺が叶えよう」

「ふーん。あんたが勝ったら?」

「俺が勝ったら…俺の息子を、助けてくれないか?」

「………いいよ」

「だよな…そう簡単に、……え」

「何」

「今、いいよって…」

「言ったけど?」

相変わらずNo.000は土砂降りの雨を眺めている。

俺の、口をパクパクと動かす間抜けな顔は見なくてもわかっているに違いない。

………恥ずかしっ

「……あんたの羞恥心なんてどうでもいいから、早く賭けの内容言ってくれない?」

「……ゴッ、ゴホン。そ、そうだな」

落ち着け、俺。

もう賭けは始まっているも同然だ。

「賭けは、俺の息子が君の予測を超えられるかどうか、だ」

「は?」

No.000──デビルが俺に視線を向けた。

冷や汗が流れる。

殺気がすごいな。

本当にまだ子供だなんて信じられない。

他の記憶媒体にはこんな気はなかった。

ただ、淡々と情報開示をしているだけだったと思う。

「どうだ?賭けるのはやめるか?」

「……あんたは、俺の予想超えることに賭けるのか」

「そりゃな。だって、お前は超えない方にかけるだろ?」

「…そうだな。まぁ、どうせ先のことなんてたかだか知れてるけど」

「いや、絶対超えるさ」

デビルは、俺の中から何かを探るように視線を俺に向けた。

冷や汗1つでも、この悪魔には情報に変わる。

耐えろ。

俺ならできる。

「……ふーん。なるほどね息子が死ぬつもりなのを知って賭けにきたわけか」

「………」

かもしれない、程度にしか俺はわかっていない。

たが、やっぱり親子だ。思考は似ていると思う。

だから、なんとなくしか俺にはわからないが、これ以上もう打つ手がない。

なんとしてでも、この賭けを成立させなければ。

「じゃあ、あんたの息子が死ねば息子の勝ち、息子を死なせずに生き残らせたら俺の勝ちってこと?」

「……いや」

わざとだな。どうする。どう返す?

「なんとしてでも死なせないようにする」

うわー、返答へただな。

さすがにやばいか。

デビルの顔を伺う。

その口元が、にぃっと嗤った。

「いいよ。あんたの息子は死なないのが前提ね。あんたの息子が死ぬ、または俺の予測を超えてきたらあんたの勝ち。

俺は嘘をつかないから、ちゃんと予測外だった時は申告しよう。

で、俺の勝利条件は、全部予測して、それをあんたが認めればいいってことだろ?」

「……あぁ」

明らかに不利なのはNo.000だ。

それなのに、勝てる気が1ミリもない。

「いいよ。その賭け、乗ってやるよ。

あー、でも、あんたに死なれると賭けになんないんだよね」

「あ」

そうだった。

まずいな。でも俺は殺されるしな…。

「だから、とりあえずあんた、死のうか」

「……ん?」

「有名な、ある森にさぁ身元不明の遺体たくさんあんの、知ってる?」

──悪魔が嗤った。

その後、俺は協力者2名とともにその森に向かい、偽装工作をした。

No.000からもらった地図を元に、指定された場所行くと本当に死体があった。

血液型、体格等俺に似ている人物であるらしい。

そいつに持ってきた俺の服を着せる。

そのあと、争ったような足跡を、靴を変えてたくさんつけた。

所持品を残しておくことも忘れない。

殴られたような傷の工作もした。

ごめんなさい、と手を合わせ、ガソリンを口から流し込み、体中にビタビタになるほどガソリンをかけ、マッチを放った。

彼女の思惑通り、口から流し込んだガソリンのせいで歯の治療痕さえ残らない焼死体が出来上がる。

それが、駆け引きの9日後の出来事だった。

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