【織田信長・毛利元就】毛利の水攻め
「殿、次は中国の毛利を攻めるのでしょうか」
秀吉の顔には信長への尊敬と期待の表情が浮かんでいた。
「それが自然だろう。中国を平定すれば、残るは九州のみ。さて、どうやって毛利を落とそうか」
「私に案がございます。水攻めをしてはいかがでしょうか。私が指揮を執りますので、殿はその間に九州へ攻め入ることができます」
秀吉の言葉は、信長の興味を引いた。それに、安土城が浮遊してからは、水攻めを行うことはなくなっていた。たまには気分転換に水攻めをするのもいいかもしれない。
「なるほどな、それは効率がいい。採用だ。中国に入り次第、お前を水源近くに降ろす。あとは好きにしろ」
その言葉には、信長の深い信頼が込められていた。
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数日後、静まり返った安土城の一室に、一人の家臣が恐る恐る足を踏み入れた。彼の顔は青ざめており、緊張感が張り詰めた空気の中で言葉を選ぶように口を開く。
「殿、申し上げにくいのですが……」
その声は、微かに震えていた。
「どうした?」
信長は眉をひそめ、家臣の表情を読み取ろうとした。
「地上に降り立つことができません」
地上に降り立てない? 信長は理解できなかった。
「俺は水源近くに秀吉を降ろすことにしている。なぜ、それができない!」
問い詰める信長に、家臣はため息をつきながら続けた。
「それが、毛利軍があちこちの水源へすでに軍勢を配置しているのです。これでは水攻めはできません。いえ、むしろ水攻めされております」
信長は、彼の言葉に耳を傾ける。毛利軍の策略が、思わぬ形で信長の計画を阻んでいる。彼は毛利元就の狡猾さに舌を巻いた。信長は独自の手法を用いて敵を翻弄してきたが、相手もまた侮れない存在であることを実感した。しかし、運命は信長に味方しているらしい。薄暗い雨雲が迫りつつあった。
「毛利の居城まであと3日ほど。それまでの間、地上には降りない。節水を徹底せよ。風呂の湯を洗濯に回せば、なんとかなる。そして、屋外に桶を並べるのだ」
信長の指示は明確だった。彼の頭脳にはすでに計略が巡っていたのだ。
3日後、安土城は毛利元就の居城まで後少しまで来た。信長の命令で節水したため、水には困らなかった。むしろ、節水しすぎて、余るほどだった。信長はそれを見て一つの計略を思いついた。
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「殿、信長が、安土城がすぐそこまで来ております!」
元就は、その報告を受けて動揺を隠せなかった。彼は心の中で冷静さを保とうと努めたが、時間が経つにつれ、その不安は増すばかりだった。
「慌てるでない。信長が蓄えた水も、そろそろ枯渇するに違いない」
彼は自らを鼓舞するが、心の奥底には不安が渦巻いていた。
「いえ、近づいているだけではありません! 山に沿って我が方へ水を流しております!」
その言葉が元就の心に重くのしかかる。まさか、信長が余った水を利用して水攻めを仕返してくるとは考えてもみなかったのだ。
「なんだと!」
元就が外を見ると、信じられない光景が広がっていた。濁流がこちらに向かって押し寄せている。まるで信長が事前に計画していたかのように、流れは勢いを増し、山の斜面を滑り降りてきた。
「水攻めをしたはずが、水攻めし返された」
そして、彼は悟った。自身の最期を。信長の智謀と、雨雲がもたらした運命のいたずらに翻弄されてしまったのだ。元就はただ、終わりを待つしかなかった。
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