第10話『聖剣ゲット!ってあれ?』


「このゴーゴン、こんなもん飲み込んでたのかよ……魔道具かな」



 ミダース・ゴーゴンの腹の中から出てきた剣は、炎のような赤い輝きをキラキラと周囲に反射させる。


 かなりしっかりとした装飾のある、いかにも王家とかのって感じの剣だ。それだけじゃなく、かなり濃度の高い魔力を感じる。


 ……これ、魔力が込められてるんじゃなくて、剣自体が魔力を作り出してるぽいな……普通の魔道具じゃないぞ


 軽く手に取ってみる。触れた瞬間は熱かったけど、すぐに手に馴染む温度になった。全体的に火を思わせる装飾がされていて、なかなかボク好みだ。


 とりあえず抜いてみよっと。



(わ……ポ……ロ……)



 うお!?急に耳元で声が!?キモ!!



「な、なななっ、アホキラキラ、オマエ今なんか言った!?」


「え?いえ、何も」



 まぁだろうよな。声違ったし。



(わ…なは……)



 や、やっぱりなんか聞こえる……え?なんて言ってる?



(我が名は……アポロ……)



 我が名はアポロ……あ、これ剣の名前!?


 なるほど!抜こうとすると自動再生でメッセージが再生される仕様なわけね!製作者、なかなか親切じゃん。いや、急に聞こえてくるのは親切じゃねーや。ボケが。

 

 あ、ていうか!



「これ、聖剣か!」



 そうだそうだ、聖剣には持ち主に名前を知らせる機能があるんだった!ボクの優秀な脳みそがピカ〜っと思い出す。


 そういえば、S級授与の時に王様に見せてもらったんだった。あの時の魔力にそっくりだ。



「聖剣、ですか?」



 おっと、ルズくん、キョトン顔。

 こいつもしかして知らない系??マウントチャンス??いや、にしても剣士ならそのくらい知っとけよ!



「は〜全く……アホで無知なキラキラ君に教えといてやると、聖剣ってのは神代に鋳造されたとされる特別な魔道具の一種なんだよ」


「ふむ」


「使用者の魔力を込めて発動させる普通の魔道具と違って、聖剣は武器それ自体が魔力を生成する機能を持ってる」


「ふむふむ」


「しかも普通、ひとつの魔道具にはひとつの魔法しか宿ってないんだ。でも、聖剣は持ち主の意思に応えて、様々な力を発揮する。だから使い方にも幅が出るわけ」


「なるほど……」


「しかも、聖剣には、所有者と完全に同調することで初めて発動する『奥義』があるんだ。聖剣によってそれぞれ異なるけど、広範囲を焼き尽くしたり、時空間を斬り裂いたり、とにかく規模がすごい」


「ほぉ!」


「その威力たるや、現代の魔術師にはとても太刀打ちできないって話だ。太刀だけに」※ボクを除いて


「なるほど、よくわかりました……えっと、ところでそれは希少なものなんですか?」



 おい。

 いまの話聞いてその質問が出るならぜんっぜん分かってないだろうがよ!!



「アホ!当たり前だろーが!……現在発掘されている聖剣は3本。たった3本だからね?持ち主が死ぬたびに争奪戦が起きて、領土や爵位と引き換えにでも欲しいってやつが後を経たない、ってお宝だよ。つまりボクは、そんな限られたお宝の4本目を見つけちゃったってこと!」


「なるほど……流石ですリュシオル様!」


「おう!もっと褒めろ!」


「いやはや、その運命力たるや、英雄としてさだめられ生まれてきたとしか思えません!きっと聖剣の方からリュシオル様を選んだのでしょうね!」


「ふふふーーん!確かに!それはあり得るわ!!」



 よし、気分いい。


 ……それにしても、ゴーゴンの腹から聖剣か。


 なるほど、それなら諸々納得がいく。


 あのミダース・ゴーゴンは、別に突然変異種じゃなかったんだ。あいつの能力が伝承上のゴーゴンと違ってたのは、この聖剣アポロを飲み込んで影響を受けてたんだろう。


 聖剣はその特殊性ゆえに保有者の肉体にも変化をもたらす。魔力の性質、外見、身体機能、様々に。


 たとえば、現在発見されている聖剣のひとつであるシャマシュの保有者、ソル王国国王陛下は、御歳おんとし98歳の老齢ながら、見た目的には20代くらいに見える。


 噂によると元々は病弱な人だったらしいけど、謁見した時に見た姿は、そりゃぁ元気いっぱいって感じだった。


 そんな聖剣を体内にずっと入れてたんだ。そりゃ石化能力が黄金化能力になったり、黄金化しても動けたりくらいするだろう。まったく、理外の剣なわけだ──理外っぷりで言ったらボクのほうが上だけど?多分この聖剣よりボクの方が魔力量多いし??


 

 ま、ともかくだ。思わぬ掘り出し物を手に入れてしまった。


 前に本で読んだところによると、契約を交わすことで初めて真価を発揮するんだっけ?うんうん。ちゃんと覚えててボクえらーい。よしよし。で、契約法は……脳内ページをパラパラ……


 あ、そうそう。名前を呼んで高く掲げるんだ。いいね、かっこよくて。ふふーん。この天才がさらに神代の武器まで手にしちゃったら向かう所敵なしですな!まぁもともとないけど。


 と言うわけで……



「アポロ!今日からオマエはボクのものだ!」



 天高く、つっても上は天井だけど、アポロを掲げる。



「リュシオル様……なんと威厳に満ちたお姿でしょう……」



 ふふん、そうだろう。誰も勝てなかったモンスターを倒し、聖剣を掲げる!まさにS級冒険者であるボクにふさわしい!さてさて、所有契約ってのは一体どんなふうに……


 シーン……


 あれ?なんも起きないな


「リュシオル様、どうされました?」


「うっさいアホキラキラ!集中力切れるから黙ってて!!っち──アポロ!オマエは今日からボクのものだぞ!」



 シーン……


 んん?なんか足りないのかな?持ち方違う?



「アポロ、今日からボクがお前の……



(無駄だ)


「ん??」


 なんか聞こえた?さっきアポロの名前が伝達されたのと同じ声のような……)


「無駄って一体──」


(無駄は無駄だ。貴殿はこのアポロにはふさわしくない)


 ああ!?!?んだとこら!?

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