第6話
同期のみんなと食事をして家に帰ると、一成は部屋のハンモックで寝ていた。
……こうして見てると、ただ綺麗な人だな。
寝てる写真とか、職場で高く売れそうだ……などと考えながら、一成のハンモックの側に座っていると、
「はははははははは」
といきなり、一成が笑い出す。
ビクッと身を引いたが、一成はまだ寝ていた。
寝言のようだ。
ひい。
怖いよ……。
寝てるときまで普通じゃない。
そう思いながらも、このままじゃ、お腹が冷えそうだな、と気がついた。
なにかかけるものを探してみる。
が、部屋が片付きすぎていて、なにも見つからなかった。
私の部屋なら、ブランケットだの、上着だのが、そこ此処に畳んでおいてあるのにな……。
うーん。
勝手にクローゼットを開けるのも、と思ったとき、それを見つけた。
昔、誕生日にプレゼントした大きなサボテンのクッションだ。
下におもりが入っていて、自立する。
私はそれを抱え、一成のお腹に横にして載せてみた。
だが、おもりのせいで、ぽすっと手前に落ちる。
……だよね。
落ちたサボテンはハンモックの横でフラフラ揺れている。
ダメか~と思いながら、その揺れるサボテンを眺めていると、
「馬鹿か」
と後ろから声がした。
片目を開けて一成がこちらを見ていた。
「お、起きてたの?」
と言うと、
「起きてた。
そして、いきなりおもり入りのサボテンを振り上げたお前を見て、殺す気かと思った」
と言い出した。
いや……クッションに入ってるおもり程度で殺される人ではないですよね、貴方。
「っていうか、なんで、私が一成を殺さなきゃいけないのよ」
「邪魔だからだろ」
……いや、一成のおかげで助かったことはあっても、邪魔されたことは一度もない気がするんだが。
ほんとうにこの人は、なにを復讐したいのかわからない、と思ったとき、一成が言ってきた。
「川田に聞いたんだろ。
あいつもお前が学校で一番可愛いと思ったって言ってた」
川田って、あの元ヤンキーさんか。
いや、パッと見て一番可愛い、じゃなかったかな。
単にその場に居たなかで、もっとも彼の好みと合致していた、というだけの話でしょうよ、と私は思っていたが、一成は、
「学園で一番可愛いのに、俺のような男と噂になって、誰も近寄りもしない。
俺の復讐は成功してるな、とあのとき思った」
と寝たまま言ってくる。
「それで喜んでおごってあげたの?」
と言うと、一成は微妙な顔をする。
なにか違うのか……?
と思いながらも私は訊いてみた。
「世間様の評価は逆よ。
みんな、貴方みたいな人がなんで、私程度の女とって思ってる。
ねえ、どうして、そんなに自己評価低いの?」
そう訊くと、一成は目を閉じ、呟くように言ってきた。
「俺みたいな、引き取られて、大事に育てられたのに、逆恨みをするような男、ロクなもんじゃないだろう」
いや、うちの両親には、自慢の息子らしいですよ。
実の息子の
「ロクなもんじゃないうえに、愛してもいない俺につきまとわれることが、お前にとって一番の不幸だろう。
お母さんたちには申し訳ないが」
ちょっとそれ、最初の設定が間違っているようだが……と思いながらも、私は訊いてみた。
「あれ?
一成、お母さんたちを恨んでるから、私に復讐してるんじゃないの?」
「もちろん。
うちの親たちが自殺するかもしれないとわかっていて止めなかったお母さんたちのことも恨んでいる。
だが、一番俺が恨んでいるのはお前だ」
……何故ですか。
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