【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第4章:解放

51 新たな日常と問題

 ゲンが運び込まれた病院に行き、タツロウに経緯いきさつを話した。

 ゲンは技術部や医療部が診てくれたが、全く原因がわからず、起きるまで入院となった。

 そして、月日が流れた。


「よし、今日の局長業務終了〜! んー!」


 私は書類をトントンと整え、イスから立ち上がり背伸びをした。

 ゲンが寝たきりになってしまったので、局長代理が必要になった。

 私にも原因があったので代理をする事になった。


 局長職は思ったより難しい事は無く、ぱぱっと終わらせた後、いつもの配達業務に行っている。


「風羽……大丈夫? 根詰め過ぎじゃない?」


 夢羽がお茶の入ったティーカップを持ってきた。


「ありがと。いや全然。むしろ、前より効率良くなったかな」


 私はティーカップを受け取り、それを一口飲む。


「効率が良くなった?」

「うん。この報告書ってあらゆる情報が集まってくるからね。その中に配達できなかった星の情報とかもあるから、それをまとめて私とか軍部のエリートが配達をする。そしたら、配達できずに放置されるってことがなくなったかなって」

「へえ……すごいね。さすが『器用』なだけあるね」

「器用かどうかはわからないけど、この仕事向いていたんだろうねー」


 私はごちそうさまと言い、ティーカップを洗って荷物の確認をする。


「今日はどこに行くの?」

「えっとー……この星かな。その前にゲンの所に顔を出す予定だよ」


 私は1通の手紙を出す。


「おっけー」


 手紙をカバンに戻し、背負った後局長室を出た。


「お! お嬢! 今から配達か?」

「うん。あと、ゲンのお見舞いだよ。タツロウさんは?」

「1件、救助しに行く予定だ」


 タツロウが指した所にサトウがいた。

 あれ以来サトウはタツロウが気に入ったようで、相棒バディとして行動を共にしているようだ。


「気をつけてね。最近、邪教の動きが活発になっているみたいだから」

「りょーかい。何かあったら連絡する」

「はいよ」


 サトウもペコリと頭を下げる。

 私も駆け足で病院へ向かう。

 空を浮遊して移動していく人もいるが、私はどうやら死んだわけではないようで、頑張っても浮く事はできなかった。

 そんな浮遊をしている人を見ながら走っていると、いつの間にか病院に着いていた。


「風羽……速いよー。また足速くなったんじゃない?」

「どうだろうね? てかこの世界で成長するの?」

「風羽は特別だから……」

「あー……」


 病院のエントランスに入り、受付に声をかける。


「あ、局長代理お疲れ様です。いつもの局長のお見舞いですね?」

「はい」

「こちらに記入をしていただいてから、そのまま病棟へ上がってください」


 私は受付簿に名前を書き、そして病室へと向かった。


「あ! 局長代理!」


 ゲンの担当の看護師が、驚きと焦りの混じった顔をしながらこちらに走ってきた。


「どうしたの? 何かあったの?」

「はーっ……はーっ……局長が……」

「落ち着いて。ゆっくり深呼吸」


 私は看護師の背中をさする。


「ありがとうございます……落ち着きました」

「良かった……それで、何があったの?」

「はい! 局長がいなくなりました!」

「えー!?」


---


「昨日来た時と変わってないね」


 ゲンがいた病室にいる。

 昨日、配達から帰還したので、そのままお見舞いに行ったのだ。

 その時はまだ、ベッドの上に寝ていた。


「ねえ風羽、あれは昨日あった?」


 夢羽がベッドの上を指す。

 掛け布団で隠れて見えない位置に、ロボットのおもちゃが置かれていた。


「ロボット? ……ゲンのいつもの姿に似てるね。まさか小さくなっただけとかないよね?」


 そうロボットに問いかけてみた。


「……おもちゃみたいよ?」

「そうみたいね」


 だが、ロボットからの反応はない。

 ロボットをカバンの中に入れる。

 そして端末を取り出し、


「あ、タツロウさん。今大丈夫ですか?」

「お嬢! 自動運転中だから大丈夫だ。どうした?」

「ゲンが……局長が消えた!」

「なんだって!?」


 クルマの中だからか、タツロウの大声が少し反射して聞こえる。


「昨日から今にかけてだから、まだ遠くには行っていないはず。軍部で手が空いている人いたら、捜索をお願いしたい!」

「待て待て! 落ち着け! 夢の星ならまだしも、ここは宇宙だ。宇宙での行方不明者は、まず情報取集からが基本だ」

「……ごめん。じゃあ、私の方から警察隊隊長に連絡するね」

「すまねぇ。こっちも別口から情報収集してみるぜ」

「うん、任せた」

「おう! サトウはお嬢に何か言いたい事あるか?」

「えっと……あ! その……一緒に頑張って探しましょう!」

「うん、ありがとう」


 私は通話を切り、端末をカバンに入れる。


「よし、私も情報収集だ」

「あたしも一緒に探すね!」


 病室から出て、局長室へと向かった。

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