46 奴ら再び現れる
「うお!? 光ったぞ!」
「うん。サイリウムだよ」
光ったプラスチックの棒、もといサイリウムを握るタツロウ。
「これって、あれか? アイドルの前で振るあれか?」
「だいたい合ってる。今は振らないで投げて!」
タツロウが振ってるのを見て、笑いを堪えながら骸骨顔を指す。
「こう?」
サイリウムを骸骨顔の後ろに投げた。
骸骨顔はその光に釣られ、追いかけていく。
「今のうちだな!」
タツロウはそう言い、ハシゴを駆け上がる。
「うん? あっつ! なに?」
「え? ……道路が熱くなってる! 下で何かあったの?」
マンホールの下を覗き込むためにアスファルトの道路に触れていた私は、急に熱くなったので手を離した。
それを見て夢羽も道路を触り確認をした。
そして、熱くない方の道路へと移動した。
「あ! それなら、こんなのがたくさんくっついてましたよ」
そう言い、袋から何かを取り出そうとする女性局員。
「待って! 夢羽、タツロウさんがサイリウムを投げた瞬間熱くなったけど、どう思う?」
私がそう言うと、首を傾げる女性局員。
「あ、今見えなくしてるからちょっと待ってね。うん、これでよし」
夢羽が突然現れた形になったからか、驚いた顔をしている局員。
「たぶん、風羽が思ってるのと同じだと思うけど、光に当てたら発熱するタイプの何かがあるね」
それを聞き頷き、マンホールを再び覗き込む。
「タツロウさん、急いで!」
「わかってる! めちゃくちゃ熱いんだよ! このハシゴ!」
タツロウは、あと少しの所まで上がっていた。
「こっちまで! ……よし!」
私はタツロウの手首を掴み、引き上げる。
タツロウは残りのハシゴを駆け上がり、そしてそのままマンホールから離れた。
「はぁーはぁー危なかったわ。まさか熱じゃなくて光だったとはな」
膝に手をつき息を整えるタツロウ。
「地下に何があったの?」
「ああ。っとその前に、サトウさん!」
「はい!」
タツロウが救助したと思われる女性局員を見る。
「その袋、俺に渡してくれ。かなり危険な物だ」
「はい、わかりました」
サトウと呼ばれた女性局員は、自分のカバンから中身の見えない袋を取り出し、それをタツロウに渡した。
「ありがとう。それでお嬢、この中に」
「待って! あれ……」
タツロウの更に後ろ、さっき2人が上がってきたマンホールからその先までの道路や住宅などの建物が、みるみるうちに沈んでいく。
「……アスファルトが溶けてるわ」
「うん、離れたここまで感じる熱さだからね……」
「やべぇ石なんだなこれ」
タツロウは、袋を更に別の袋に入れる。
「その中にあの石が入ってるの?」
「ああそうだ。キラキラしている石でな、火を近づけたから熱くなったのかって思ったが、光だったんだな」
「ライターの火、手で囲ってなかったら危なかったですね」
「たしかにな。俺の不注意だったわ。失敬」
サトウとタツロウは笑い合っている。
「なーんか仲良しって感じね。どこで何があったの?」
夢羽が2人に近づく。
「あ、いえ! タツロウさんは恩人です!」
「ははは! 仲良しに見えるか! そりゃ死線をくぐってきた仲だからな!」
「私は逃げただけです!」
「ははは! 半分冗談だ。知っての通り、俺だけなぜかクルマからいきなり洋館に飛ばされてな。そこであの骸骨顔を退けながら探索してたら、捕まってたサトウさんを救助したって感じだ」
サトウは両手をぶんぶんと振る。
タツロウは大笑いしている。
「タツロウさんに救助された方だったんですね。私は風羽で、こっちは夢羽です」
「あ、私サトウといいます。風羽さんに夢羽さんですね。あ! もしかして凄腕隊長さんですか!? さっき夢羽さん消えていましたが、私達って消えることできるんですか!?」
すごい質問攻めされてる。
「あはは! 風羽質問攻めされてるー!」
「いや夢羽もだよ。凄腕って言われてるけど、運良く5人一気に助けられた救助隊員で隊長です」
ペコリと頭を下げて挨拶する。
「あと部長もでしょー。あ、消えるのは特殊な訓練しないと無理だから、ずーっとこの世界にいたら出来るようになるかもね」
夢羽はなぜかさっきから爆笑している。
サトウは「特殊な訓練が必要なんですね!」と意気込んでいる。
「あ、あれ!」
夢羽がさっき崩落した所を指す。
そこには、さっき崩壊したはずの住宅街があった。
「ああ、そういえばいい忘れてたな。1つ前の夢の星と同じような現象が、この星でも起きてるぜ」
タツロウはタバコを咥え、火を点ける。
「え? それって街が復活したのと関係している?」
「ああ、大アリだ。俺達は巻き戻らんが、街、建物、環境全てに何か影響があった場合、巻き戻るみたいだ」
近くにゴミ集積場所があり、そこにタバコを投げるタツロウ。
「良い子は真似しないことだ。すぐこうなるぜ」
タバコの火がゴミに引火し小さな
「タツロウさんやりすぎですよ!」
私は近くにあった消化器を持ち、それの栓を抜こうとした。
「待て待て、消火活動はこれを見てからだ」
自身が燃やしたゴミ集積場所を指す。
燃えてしまったゴミが復活していて、他の燃えた物全て元通りに戻っていた。
「何なんだろうな、この現象は」
「あたしもさっぱりだわ」
「夢羽関係じゃないんだ」
「だから、あたしは最初から関係ありませんわよ!」
夢羽は頬を膨らませる。
「おっけー……とりあえずこの話題は置いておこう……それよりあれ、呼び起こしちゃった感じ?」
私は住宅街の方を指す。
「多いな」
「な! 何ですかあれ!」
「先に負傷者2名送っておいて正解だったわね」
「あーたしかにね。あれ相手しながら背負うのは無理だわ」
そこら中から、酔っぱらいのような人達がどんどん集まってくる。
狂人だ。
「またあの視線がグルグル回ってるね」
「ってことは、イベント開始ってことかな?」
「そ、そんな事言ってる場合じゃないですよ! 逃げましょう!」
「これの出番だな」
タツロウは、さっき袋を二重にしたあの熱くなる危険な鉱石をカバンから取り出した。
そして、袋から手のひらで握られる量を出した。
「おりゃ!!!」
それを狂人に向けて投げつけた。
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