47 危険な石と骸骨顔の正体

「お嬢! 今だ!」


 タツロウが投げたキラキラ鉱石と距離を離すために、猛ダッシュで退いている。

 私はカバンからサイリウムを取り出し、それを折った後キラキラ鉱石に目がけて投げた。

 サイリウムの中の薬剤が上手く混ざったようで、キラキラ鉱石の近くで光る。

 そして、


「うわ! あっつ! まぶし!」


 全てのキラキラ鉱石がオレンジ色に光り輝き、そして熱を発し始めた。

 狂人達は突然の暑さに耐えきれなくなったのか、ガクンと膝から落ちる。

 そして、狂人が燃えて無くなってしまった。


「とんでもない石だなおい。お嬢! これは危険すぎるぜ」

「たしかにそうだね……。でもこれ邪教の目的と一致しないから、使われなさそうな気がするんだけど?」

「邪教って、あのいけ好かねぇ仮面野郎がいる教団か」


 タツロウは拳をわなわな震わせる。

 あれ? そういえばさっきから夢羽が大人しいような?

 そう思い、夢羽を見る。


「これってあれよね……いやでも、これを作る為には……」


 夢羽はいつもの如く、何か考え事をしながらブツブツと呟いている。


「夢羽、聞こえてるよ」

「わあ!? 何かあたし言ってた?」


 物陰に隠れた後、こちらを見た。


「うん、これを作るとかどうこう」

「忘れてー!」


 夢羽はまた顔を引っ込める。


「いや忘れてって言われてもなー……てか、夢の星で生まれた物だと思ってたけど、作られた物なの?」


 私はタツロウが持つ袋の中に手を入れる。

 触った感触は普通のゴツゴツした石という感じだ。

 表面はツルツルしている。


「聞かれたのならしょうがないわね。言える事は2つ。人為的にしか作れないという事と、材料は霊気だけという事だけかな」

「霊気!?」


 私が驚いている横で、タツロウとサトウは首を傾げる。

 私は霊気やそれに関係する邪気について、タツロウとサトウに話す。


「その霊気と邪気が、俺達の魂に1対1の比率で混ざっているってことだな」

「まあそんなとこかな」

「あのー……私聞いてもよかったのでしょうか?」

「まあ、巻き込まれたと思っておけ」

「は、はあ……」

「それで?」


 私は夢羽が隠れている民家の外壁の内側を見る。


「その霊気で何を作ったって?」

「えーっと……見ての通りです。あ! 誓って言うけど、あたしじゃないからね!」


 夢羽は手をぶんぶんと振っている。

 すごく怪しいけど、夢羽が犯人ではないようだ。


「でも作成方法は知っていると……情報が漏れたんじゃない?」

「え? どうやって?」

「……たしかにどうやって漏れるんだろ」


 私と夢羽が首を傾げたので、タツロウとサトウも一緒に首を傾げる。

 そうしていると、なぜかサトウが後ろを指して顔を引きつらせた。


「……うわぁ」


 気になったので振り返る。


「うん? ……また来たのね」

「はは、ほんと懲りない奴だな」

「な、何で皆さん落ち着いているんですか!?」


 私の一言で夢羽も振り向き、タツロウも奥の方に気づいて笑い出した。

 サトウは声が震えている。


 そこには、大鎌を持った骸骨顔が重い足取りでこちらに近づいてくる。


「お嬢! こいつ、火が弱点だぜ」

「うん。いいよ、やっちゃって」

「あいよ!」


 タツロウはカバンから瓶を取り出し、それの先端についている布に火を点けようとした。


「おわ!? 割られただぁ!?」

「キキキ……ごめんなさいね~。私の戦闘の邪魔になるので、投げないでね~」


 空中に閃光弾が放たれ、辺りが昼間のような明るさになった。

 それと同時にタツロウが持っていた瓶が黒いナイフに割られ、骸骨顔に大きな黒い剣を叩きつけた少女が現れた。

 アイリス・ネフィリアだ。


「な! アイリス!? 何しに来た!」

「あらご挨拶ね~。こいつを作った本人に用があるから来たのよ~」


 大鎌と黒い大剣が交わり、金属音が鳴り響く。


「え? 夢の主じゃないの?」

「あら~。夢羽様ご機嫌麗しゅう~。ええ、この死神もどきはロボットですわ~」

「ロボット!?」


 アイリスが大鎌を真っ二つにした後、骸骨顔の胴を叩き斬った。

 その切り口から、部品のような物が飛び散る。

 骸骨顔はその場に倒れて機能停止した。


「本当ね……これ、ロボットだわ」

「夢の住民じゃなかったんだ。じゃあ、今までのって夢のイベントとかではなかったってこと?」

「今までどういう事があったか知らないけど~、結構前から目撃されていたみたいよ~」


 アイリスは大剣を手放すと、それが消えてなくなった。

 それと同時に、閃光弾の光が消えた。


「ってことは、この星の時間かなり遅いってことかな?」

「最近報告が増えている、例の時差が出ている件か」


 服にかかったアルコールを拭き終えたタツロウが、私の横に立つ。


「あ~この事ね~。邪教が目撃された星は、だいたい遅く帰って来るわね~。何かあるのかしら~?」

「邪教が関係している? あの仮面のマッドサイエンティストが作った物ってこと?」

「いや、時を操る物って、いち個人が作れていい物じゃないわよ!」


 なぜか怒っている夢羽。


「怒っている夢羽様も素敵~。まあ、私が用があるのはこれだから~、その時間関係は任せるわ~」


 アイリスは、骸骨顔の胴体の中に手を入れ、小さな機械を取り出した。

 そしてそれを別の機械に接続した。


「あっちね~。私は行きますが、どうします~?」


 接続した機械のモニターに赤い点が表示されている。

 発信源が特定できたのだろう。


「うん、ついていくよ。夢の主の手がかりにもなるだろうし」

「時を操る物も持っているかもしれないからね」


 私と夢羽は頷く。


「じゃあ俺は、サトウさんを送り届けるぜ」

「あ、それだったら私のクルマ使って。他の局員も乗せたままだから」


 そう言い、端末を操作してクルマを呼び寄せた。

 空で待機していたクルマはすぐに降りてきた。


「お嬢と姉御、2人も助けたか! さすがだぜ!」


 クルマの中を覗き込むタツロウ。


「待って。姉御って誰?」

「誰って姉御は姉御だ。よく考えたら総長はおかしいと思ってな。んで、お嬢の姉って聞いたから姉御だなと」

「え? いつ言ったの?」

「この星に行く前のクルマの中で、姉御がポロっと言ってたぜ」

「よく憶えていたな……」


 そして、クルマに乗り込むタツロウとサトウ。


「そろそろ行くわよ~」

「おっと、ごめん。それじゃ、タツロウさんよろしくお願いします」

「りょーかい! 任されたぜ!」


 そう言い、タツロウ達が乗ったクルマはあっという間に星の外へと飛んで行った。


「お待たせ」

「遅いわよ~! 夢羽様の金魚のフンじゃなかったら置いて行ったわ~。あ、フンだったら置いて行ってもよかったわね」

「誰が金魚のフンだ! 私は風羽ふうだ!」

「似たようなもんよ~。いずれ私が夢羽様の隣に立つわ~」


 アイリスはモニターを見ながら歩き出す。


「誰にも譲らないよーだ」

「ふふふ。誰にも譲れないから大丈夫よ。てかあたし、霊神ソラじゃないしね」

「それは嘘ね~。私の目は誤魔化せませんわ~」

「どうしたら信じてくれるのやら……」


 そんな事を話しながら、住宅街の中へと進んでいった。

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