45 洋館からの脱出②

 タツロウは液体の入った瓶とライターを持ち、骸骨顔を睨みつける。

 骸骨顔もまた、液体の入った瓶を両手に持ち、タツロウと同じ姿勢で立った。


「そこまで真似するか。上等だぜ!」


 タツロウは瓶の先端の布に火を点け、それを骸骨顔の前に投げつける。

 骸骨顔もタツロウが投げた場所に瓶を投げた。


「ん? なんだ?」


 火の点いた瓶は床に落ちて割れた。

 だが、骸骨顔が投げた瓶の液体のせいか、火がすぐに消火されてしまった。

 顔が見えないからわからないが、身体の動きが笑っている時の動きをしている。


「水か? できればこれは使いたくなかったがー」


 タツロウはカバンの中から、似たような液体の入った瓶を取り出した。

 そして、蓋を開けて布を差し込み、再び蓋を閉めた。


「おっと! そりゃ、待つわけないよ!」


 骸骨顔は大きな鎌を振り回しながらタツロウに迫る。

 タツロウは銃で応戦する。

 ロビー側の扉に近かった立ち位置が、どんどん後ろに下がって真ん中辺りを超えてしまった。


「おら! これでも喰らいやがれ!」


 布に火を点け、それを壁に投げつけた。

 投げた瓶が割れ、小さな爆発が起きて一気に燃えた。

 骸骨顔が瓶を投げ入れると、更に火の勢いが増した。

 骸骨顔は近づこうとするが、勢いよく燃えている炎に近づけないでいる。


「ははは! これはガソリンだぜ」


 タツロウは再び投げるために火を点けようとした。


「タツロウさん! 奥に道ができました!」

「でかした! ほれ、これもおまけだ」


 タツロウは火を点けた瓶を放り投げる。

 落ちた瓶は割れ、更に燃え盛る炎により骸骨顔の進行方向がさえぎられる。

 タツロウは骸骨顔に背を向け、扉の中へと入った。

 部屋の中は今まで行った3つの部屋と同じ家具配置で、唯一違うのが奥の隠し通路だけだ。


「出口かどうか知らんが、もう道はここしかないしな。行くか」

「……はい」


 サトウは不安そうな顔をしている。


「大丈夫だ。あいつは足止めをしたから追ってこないし、お前さんはちゃんと郵便局に帰してやる」

「はい……ありがとうございます」


 タツロウは、隠し通路に入る。

 その後ろからサトウがついてくる形になった。

 入ってすぐハシゴがあり、そこをゆっくりと下りる。


 ハシゴで地下に下りるとまた通路になっており、ジメジメした感じで湿気が多く、少し暗くてよく見えない。


「ひ!」

「壁はあまり触りたくないな。ヌルヌルしてやがるぜ」


 サトウは壁に触れるたびに小さな悲鳴をあげている。

 その通路を抜けると、広い洞窟に出た。


「はー、これはすげーな!」

「綺麗ですねー! あのキラキラしているのは何ですか?」


 サトウは壁や天井でキラキラと光る何かを指す。


「なんだろうな? 現世には無いタイプの鉱石かもしれんな」


 タツロウは、その鉱石をよく見るためにライターを点けようとする。

 しかし、風があるのかなかなか点かないので、手で囲う。

 ようやく点いた火を鉱石に近づけて、じっくりと見た。

 すると、


「あちあちあち! うわ、やべぇ! 火を近づけたらすぐ熱くなったわ」

「そんな石があるんですね! 持って帰りますか?」


 サトウは、まだ火を近づけていない鉱石を集めてきた。


「何かに使えるかもしれないし、取っておくか」


 タツロウはキラキラ石を、少しだけカバンの中に入れる。

 サトウも、取ってきた残り全てを自身のカバンの中に入れた。


「それにしても、どこまで続いているんだろうな。もしかしたら、お嬢のいる所まで繋がっていたりしてな」


 そう言い、タツロウは奥へと進む。


「お子さんがいるんですか?」

「ん? いや、この世界にはいないな。ちゃんとまだ生きている」

「そうだったんですね……私も同じです」


 サトウがそう言うと、シーンと静まり返った。


「この話題はおしまい! 湿っぽい話はなしだ!」


 タツロウは両手をブンブンと振る。


「そうですね! 未練を解消して、次の人生へ! ですね。というか、タツロウさんがこの話題を振ったんですよ?」


 サトウは両手を上げてバンザイのポーズをした後、ちょっと怒った表情でタツロウを見る。


「うん? 話題を振った? 俺は子どもの事は話してないぜ」

「でもさっき、『お嬢』って言ってましたよ?」

「ああ! お嬢はお嬢だ。俺の子じゃねぇ」


 タツロウがそう言うと、サトウは一瞬首を傾げたが、すぐに戻り首を横に振った。


「それ答えになっていません」

「ああ、すまん。お嬢は、俺が加入している組織の隊長だ」

「そうだったんですね! その隊長さんもこの星にいるんですか?」

「ああ、いるぜ。凄腕の救助隊員だ」


 タツロウは上に続いているハシゴを見つけたので、それを上っていく。

 そして、マンホールに当たったので、それを押して開いた。


「お? どうやら俺の予想は当たってたみたいだぜ」


 下にいるサトウに声をかける。


「ここ登ったらいいのですか?」

「ああ。ってやばい!」


 タツロウはそう言い、マンホールを外側に倒して開けっ放しにし、ハシゴを滑り下りた。

 そして銃を取り出し、サトウをかばいながら奥の方に発砲する。


 ゆっくりとタツロウ達の所に近づいてくる。

 黒装束の骸骨顔だ。


 顔や身体に銃弾を受けているはずだが、弾かれている感じがして全く通用していない。


「ちっ、やばいな。先に上がってくれ」

「わ、わかりました!」


 サトウはハシゴを登り始める。

 骸骨顔はサトウを見て何かを取り出そうとしている。


「てめぇの相手は俺だよ、骸骨顔!」


 タツロウは骸骨顔が取り出した物を撃ち落とす。

 骸骨顔は再びタツロウの方を向き、鎌を振り回し始めた。


「そうだ。その調子で登っていけ!」

「はい!」


 タツロウは、サトウに気が向かないように骸骨顔に威嚇射撃をする。


「登りました!」

「りょーかい!」


 開けっ放しのマンホールから顔を出すサトウ。

 タツロウは上を見ず合図した。


「タツロウさーん。これ使って!」


 次に風羽が開けっ放しのマンホールから顔を出し、棒のような物を落としてきた。


「あ! お嬢! 助かる!」


 タツロウは風羽から受け取る。


「なんだこれ?」

「折って!」


 そして、受け取ったプラスチックの棒を折った。

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