23 2人の夢の主

「え、衛兵!」


 王はびくびくしながら叫ぶ。

 それを聞きつけた兵士達が、私と偉そうな兵士達を取り囲む。


「おい、巨大ロボ」

「いやだから巨大ロボじゃないって……」

「何でもいい。この状況をどうにかせよ」

「いや、状況を悪化させたのってそっちだよね……」


 私はカバンのポケットから手紙を1通取り出す。


「えっと……メグルさんでいいですか?」

「カイだ」


 横にいる偉そうな兵士が答える。


「いや……貴方に聞いてないですよ。夢の主さんにです」

「だから、僕が夢の主だ」


 仁王立ちしている自称夢の主のかいが、なぜかこっちにドヤ顔を向けている。


「僕がメグルです……夢の主ってのが何なのかわかりませんが……そうです」


 オドオドしながら答えるめぐる


「読み方は違うけど、同じ名前の人が2名同じ夢の中にいる……」

めぐるかい……」

「(どうしたの? 何かわかったの?)」

「いや、何でもないわ」

「ふむ……」


 どちらに渡せば良いのかわからない手紙をまじまじと見る。


「まあ、どっちも同じ夢の主だから、どっちに渡してもいいかな」

「いや良くないだろ。郵便はちゃんと宛先に渡せ」


 なぜかカイの方に怒られる。


「えー……あ! メグルとカイって、起きた時も2人なの? 二重人格みたいな感じに」


 そう聞くと、


「ぼ……僕……」


 メグルが手を挙げ、そして注目されたからか恥ずかしがって萎縮いしゅくした。


「もしかして、メグルが日常生活を送ってるの?」

「は……はい」

「じゃあ、この手紙はメグルのじゃん!」


 私はメグルに手紙の束を渡そうとした。


「待て!」


 すると、カイが私の前に立ちはだかる。


「……宛先に渡すのよね?」

「そうだ。そして、それを決めるための戦争をしている所なのだ!」


 そう言い、カイはあの緑の光線を自身の味方兵士に当てた。

 兵士はグングンと大きくなり、私の3倍ほど大きくなった。


「やれ! そいつを倒したら僕がこの夢の主なのだ!」


 大きくなった兵士はメグルに近づく。

 メグルは攻撃を避けるために、玉座の後ろに隠れる。

 衛兵はメグルの周りを囲む。


「いやそれはさすがに暴論だよね」

「そうでもない気がするわ」


 何か考え事をしていた夢羽が、突然反応した。


「(え? どういう事?)」

「メグルが現世での主導権を握っていたとしても、その現世でもカイとコンタクトを取っていた場合は、夢の主になる権利があるわ」

「え? ……メグルはカイと現実世界でも話したりする?」


 私は、玉座の後ろに隠れていたメグルを見る。


「あ……はい……」


 どうやら現世でも、カイはメグルと話をしているようだ。


「(ということは?)」

「この戦争終わらせないと、配達も終わらない……」

「(いやさっき見てたけど、終わらないじゃん、この戦い……)」

「でもちょうど、目の前に終わる鍵がいるわね」


 前を見ると、ドヤ顔で突っ立っているカイがいた。


「……」


 私はホルスターからナイフと銃と抜き取り、つくちゃんに非殺傷弾を撃つタイプの銃に変わってもらった。

 そして、銃をカイに向けた。


「ちょちょちょ! 僕を撃つのか!?」

「そしたら丸く収まる……でしょ!」


 数発カイに向けて発砲した。


「うわ!? ……ナイス!」


 しかし、巨大兵士Aがカイの前に立ち、弾丸を盾で弾いた。

 そして、剣を振って切りかかった。


「おわっ! こいつら剣と盾なんて持ってたっけ?」

「巨大化する前に持ってたわ」


 左手のナイフで剣を受け流し、右手の銃でもも辺りを狙い2発撃った。


「ぐおおおお!」


 今度は命中し、片足を床につけて痛みに耐えている。


「よし1体目! ほらほら、でかいの2人。私が相手だよ」


 メグルへの攻撃を続けている2人の巨体兵士に、1発ずつ撃って牽制する。

 兵士の背中に当たったが、さっきの兵士とは違い甲冑かっちゅうを身に着けていたので、鈍い音が響いただけだった。


「そいつは無視してもいい。さっさとメグルをやれ!」

「あ、それでいいの? じゃあ、私は君を狙うね!」


 私は再びカイに銃口を向け、そして今度はすぐに撃ち放った。


「うわ!? ……サンキュー」


 また1体の巨体兵士がカイの助けに入った。


「1体ずつ片付けていけばいいのね。まあ、その方が楽だからいっか!」


 横ぎの斬撃が来たので、それを屈んでかわし、2発腕辺りにお見舞いした。


「……甲冑は反則だよー」


 また鈍い音がして、全てさえぎられた。

 全身甲冑に覆われているので、隙間を狙わない限り攻撃が通りそうにない。


「わっはっは! メグルがやられるのも時間の問題だな! そこの巨大ロボ、今のうちに降参して手紙を渡せ」

「何を言ってるのだか……いやだから私は巨大ロボじゃないって」


 隙あらば銃弾をカイにお見舞いしているのだが、全て甲冑兵士に遮られる。


「(あれ、どうすればいいと思う?)」

「うーん……実在しない武器にも変わる事できるのかな?」


 甲冑兵士からの振り下ろし斬撃が来たので、ナイフで受け流す。


「(というと?)」

「こういう銃になってほしいって妄想してみるとか」


 同じ箇所に3発当ててみたが、見事に全て弾かれた。


「(うーん……じゃあ、甲冑を着ていても攻撃が通る、感電して動けなくする電撃銃とか)」


 と妄想すると、いつもより強めに光ったつくちゃん憑き銃は、また見た目は変わらない何かができた。


「できたんじゃない?」

「(まあ、試してみるしかないよね)」


 ブレても当たるように、胴体を狙う。


「なんだなんだ!? お前今光ったよな!?」


 カイはびっくりしてキョロキョロしている。


「さて、何の事でしょう?」


 甲冑兵士に向けて、いつものように撃った。


「ぐっおっおっおっおっ!!!」

「びゃあっあっあっあっ!!!」


 ついでにメグルを襲っている兵士にも撃っておいた。

 兵士2体は電気が走ったかのように青白く光り、そして勢いよく後ろに倒れた。


「はぁ? 何をした?」

「試し撃ちかな?」

「お前もあの胡散うさん臭い科学者の知り合いか!?」

「え? 何その胡散臭い科学者って……」


 カイは、ミニミニ光線を出した銃を私に見せた。


「これって夢の中の誰かが作ったんじゃないの?」

「いや違う。外の世界から来た人から貰った。その胡散臭い科学者も、お前と同じ服を着ていたな」


 ということは、星間郵便局の局員ってことかな? 胡散臭い科学者……ゲンは知ってるかな?


 私は端末のメモ機能に、あとでゲンに聞くこととして書き留めた。


「残念だけど、私はその胡散臭い科学者とは知り合いじゃないよ。その科学者に、この銃と他に何か貰ったの?」


 私はカイからミニミニ光線銃を取り上げる。


「そいつから、『お前も夢の主になることができる』と教えてもらった」

「なるほどね……それで? 諦めた?」


 私は銃をカイに突きつける。


「……降参だ」


 カイは両手をあげる。

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