22 城内潜入
地下監獄の出口から出た私は、周囲に兵士がいないかを確認した。
「陛下を探せ!
緊急事態なのか、全体的に慌ただしい感じがして、監獄の出入り口なのに警備が薄い。
「今のうちにー……」
「風羽!」
「うん? どうしたの?」
「高い所から様子見るよ」
「高い所なんて登ったら、兵士に囲まれて終わりでしょ」
地下監獄の出入口は城壁の中にあり、他にも監視塔や城のような大きな建物もあった。
「ほら、あの城に夢の主がいるんじゃない?」
「んー……そんな感じがしないのよね……もしかして風羽、敵側に捕まったのかも?」
「どっちかわからんね……その確認のために高い所に登るのね」
「うん、そういうことー」
監視塔のある場所まで走る。
「貴様ー! 待つんだ!」
右の方から兵士が3人走ってきた。
後ろ2人が撃ってきているようだが、走りながら撃っているせいか、違う方向に飛んでいっている感じがする。
「銃はこう撃つんだよ」
その場にピタリと止まり、3人の太ももを撃ち抜いた。
「ぐあああ!」
撃たれた兵士は、もがき苦しんでいる。
「風羽、吹っ切れた?」
「吹っ切れてないよ! できれば怪我はさせたくないんだけど……」
私がそう言うと握っていた拳銃が光った。
「え? 光った! ……何が変わった?」
安全装置を付け、細かい所まで確認した。
銃口がさっきのより広い。
だが、他は大差なかった。
「撃ってみたらわかるんじゃない? ほら、また来たよ」
「待てー!」
夢羽がそう言うと同時に、兵士の叫び声が聞こえた。
「待ちません……よ!」
さっきと同じ所に立ち止まっていたので、先程と同じように太ももを狙って撃った。
「ぐあああ!」
兵士は先程と同じようにその場に倒れ、もがき苦しんでいる。
だが、血が流れている様子はない。
「これってもしかして非殺傷のゴム弾ってやつ?」
「そうかもしれないわね。つくちゃんが風羽の要望聞いたのかも」
「なるほど……でもこの威力だと、骨は折れてるかも」
「どっちも痛そうだけどねー……。まあ、どうにかしないと、相手は襲ってくるもんね」
「まあね……」
目前と迫った監視塔へ走る。
そして、入り口に辿り着いた。
木と鉄が合わさった扉のようで、簡単に壊せそうだ。
「まあ、鍵閉まってるよねー……」
ドアノブ付近に銃口を向ける。
そして、そこに向けて発砲した。
「はい、これで開いた」
「ピッキングしないのね……」
「急いでいるし、木のドアだったからね」
中に入ると、
その階段を一気に駆け上がり、屋上に出た。
「さて高い所に出たよ」
「どれどれー?」
そう言い、声が聞こえなくなった。
夢羽は周囲を見ているのだろうか?
「夢羽って、そもそもどうやって見てるの?」
私も双眼鏡を使い、城下の様子を見る。
やはり慌ただしく、戦場に走っていく様子が見られる。
「うーんと……風羽の頭の上に、360度見えるカメラがついているって考えたらいいよ」
「なるほど……あと、どのくらいの範囲まで見えるの?」
「というと?」
「さっきの地下監獄だと、私が見えない所も見えてたよね」
「あ、そういうことね。風羽が立っている所から、普通の人間と同じ距離しか見えないよ。ただ、
「なるほどね……ということは、障害物のないここだとあまり力を発揮しないってことか」
「うん、そうなるね。あ! あっち側にもお城っぽい建物あるよ!」
私は周囲を見渡す。
たしかに、城みたいな建物が反対側にもあった。
「かなり距離ありそう……レンタカー使っちゃう?」
「その方がいいかもね。高度は高めがいいと思うよ。流れ弾怖いし」
「そうだね」
私は監視塔に横付けする感じに、レンタカーを出した。
そしてそれに乗り込み、一気に上昇。
今更だけど、荷物の中身も全部小さくされたのね……。夢の中とはいえ、すごい技術だな……。
そんな事を思いながら雲の中に入り、反対側の城へと向かった。
捕まっていた城塞を抜け、下の方を見た。
戦争が繰り広げられており、兵士が倒されても、後方からどんどんと湧いて出てくるのを確認した。
「あれじゃ、人員不足での戦争終了は無さそうだね」
「そうだね……」
戦場の様子を見ていたら、いつの間にか反対側の城の側面に着いた。
私はレンタカーから降りてそれを回収した後、城壁に近づいた。
「これどうやって登るの?」
「登れないわよ。どこか侵入できる場所があれば……」
夢羽は入口を探し始めたのか、再び静かになった。
私は壁
「あ、ここ亀裂が入ってるじゃん。光が見えるし、向こう側に行けるかも」
亀裂の中に入り、進む。
「そうなの? あ、そうか。あたしには壁は遮蔽物扱いだから見えなかったのか……ちょっと設定が必要ね」
「それ、設定とかあるんだ……よっと、よし侵入成功」
亀裂から城壁内に入り、兵士はいないか確認した。
「戦争中だからかな? 警備が薄いね」
「警備箇所を絞ってるのかもね。ほら、あの扉の前にはいるよ」
城へ入るための扉の前に、兵士が1人立っていた。
「他の入口にも兵士いる?」
「うん、いるわ。その近い扉の兵士を寝かせてから、入ったほうがいいんじゃない?」
「それもそうだね……何か、撃たれた時に叫ばない銃ってない?」
ホルスターから抜き取った銃を見ながらそう言うと、また銃が薄っすらと光った。
見た目はあまり変わっていない。
「……何かが変わったのかな? あ! サプレッサーが追加されてる」
「銃が消音になっただけ? とりあえず撃ってみたら?」
「とりあえず撃つって発想怖いな……」
銃を構え、そして急所を外して2発撃った。
「うん?」
兵士は腕に違和感を感じたのか、上げたりグルグル回したりし始めた。
「あ……」
そして、兵士はその場にバタリと倒れた。
「倒れたよ……死んでないよね?」
「夢の住民だから死んでないと思うけど……」
私は兵士に近づく。
「寝てる……ってことはこれ、麻酔薬か睡眠薬を撃ち出す銃だ」
兵士を邪魔にならない所に寝かせ、扉をゆっくりと開けた。
「(よし、クリア)」
「そこの小部屋に兵士が1人食事してるね」
「(りょーかい)」
小部屋に近づき、兵士の死角に入り、首元を狙って銃を撃った。
「うっ!」
首元だからか、すぐに効果が現れたようで、座ったまま寝てしまった。
「(煙幕はいただきます……お? まだ手を付けてない食べ物もあるね……どれどれ?」
テーブルの上を見ると、食べかけの弁当箱の横に、未開封のパンが置かれていた。
「(おかずを最初に食べる派でしたか……そちらはいただきますね)」
パンを取り、カバンに入れた。
「風羽、気を付けて。兵士の動きが変わったわ」
「(え? バレた?)」
「そんな事はないと思うんだけど……」
夢羽は城内を探っているようだ。
私は周囲を確認した。
赤いカーペットが敷かれている廊下と、そうではない廊下があった。
赤いカーペット……
その廊下を進む。
「風羽、何かわかったのね」
「(うん。この赤いカーペットを辿っていったら、玉座の間に着きそうだなって)」
「たしかにそうね。あ! そこの曲がり角から兵士が1人」
「(りょーかい)」
曲がり角のすぐ近くの壁に背を預け、銃を構える。
そして、兵士が姿を表した。
私はその兵士の首元を撃ち、そして倒れてきたので、それを支えてゆっくり寝かせた。
「(よしおっけー)」
「あの扉の先に2人の兵士がいるわ。その先が玉座の間みたいよ」
「(扉が二重になってるの? 面倒な作りだね……)」
「扉を開ける時って隙が大きいからね」
「(なるほど……ってことは、私が普通に開けたらやられるってことじゃん)」
「大丈夫よ。風羽だし」
「(どういうこっちゃ……まあ、何とかできそうだけどね)」
大きな両開き扉に近づきそして、片方を押して隙間を作った。
そこに、ベルトに下げていた煙幕を引き抜き、投げ込んだ。
「うわ! 何事だ!!」
「見えん! ごほごほ! こちら玉座の間前、奇襲を受けている!」
私は開けた隙間から中に入り、もう1つの扉を押して開き、中に入ってすぐに閉めた。
「ほら、大丈夫だったでしょ」
「(いや結構ギリギリだったんだけど……)」
銃をホルスターに戻し、玉座の間の奥を見た。
そこに、
「し、侵入者ですか!? 衛兵はどうしたんですか!」
すごくおどおどした子どもが1人、玉座の上に座っていた。
頭の上にはちゃんと王冠が乗っかっている。
反対の城で捕まった時に会った、偉そうな兵士に似ている。
「貴方が夢の主ですか?」
「夢の主? 貴方は一体?」
王は首を傾げる。
「私は……」
「そいつは夢の主ではない! 僕がそうだ!」
私のリュックが突然開き、中から小人が現れた。
そして、あの緑の光が照射され、見る見るうちに私と同じくらいのサイズになった。
出てきたのは、あの偉そうにしていた兵士と、付き添いの兵士2人だった。
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