第2話-⑧

日が落ち大塚神社おおつかじんじゃには人が集まってくる。


「……っ」


俺は引きつっていた。

忠春ただはる大塚神社おおつかじんじゃに来た俺は完全に戸惑っていた。

なぜなら見たくもない顔があったからだ。


なっんでお前がいんだよ!!!!彼方おちかた!!!聞いてねーよ!!!


声にならない声を必死に胸の中に閉じ込める。

海晴かいせいの隣には無表情の彼方おちかたの姿。


真雪まゆきも誘った!」


満面の笑みで言う海晴かいせいに俺は引きつった笑顔をしか出来ず、俺の隣にいる忠春ただはるは俺の心情を察してかすかさず間に入る。


「あ!そうなんだ!俺隣のクラスの大津おおつ忠春ただはるそしてこっちが諏訪すわ柚希ゆずき ユズは俺と一緒のクラスなんだ よろしくね」


「つかそんな自己紹介しなくても中学一緒だったんだから知ってんだろ なー彼方おちかた


イライラしている俺はぶっきらぼうに彼方おちかたに言う。

すると彼方おちかたはキョトンとした顔で俺らの顔を交互に見る。


「…中学?」


「は?嘘だろ お前覚えてねーの!?」


「…ごめん 人覚えるの苦手で…」


中3の時同じクラスだったろうが!

その言葉は心の中に留めたが、俺のイライラは止まらない。


「ユ〜ズ!人には得意不得意があるんだからしょうがない!今自己紹介したんだし、今回は覚えてくれるよ!ねっ?」


忠春ただはるがすかさずフォローに入る。


「うん…」


その言葉に彼方おちかたは頷く。

バツが悪そうな顔をして俺から視線を外す彼方おちかた

その様子を見て何か違和感を感じた。

中学の頃の彼方おちかたはもっとこう…感情を表に出さなかった気がする。

彼方おちかたの横にいる海晴かいせいに目を向けると許してやってと言うようにアイコンタクトをしてくる。

その仕草をみてふたりの仲の良さが浮き彫りになった気がした。


自分の中でのモヤモヤがどんどん大きくなる。

海晴かいせいは大切な友達だ。

彼方おちかたるむ事で何かあってからじゃ遅い。

何かしでかしたら絶対に許さない。

俺は強く心で思った。

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