第2話-⑨

諏訪すわくんの睨む目つきが怖い。

俺は梶野かじのくんに誘われ、大塚神社おおつかじんじゃのお祭りに来ていた。

早めにバイトを上がり、梶野かじのくんと待ち合わせをして、てっきり二人なのかと思っていた所に諏訪すわくんと大津おおつくんが来た。

彼らも梶野かじのくんに誘われたらしかった。


初対面の思っていたのは俺だけで、諏訪すわくんと大津おおつくんとは中学が同じらしい。中学の同級生なんて誰一人覚えていない。あの時は朱雨しゅう以外見えていなかったから…。


(なんか…怒ってる?)


梶野かじのくんの隣で屋台を色々見回っている時も後ろから諏訪すわくんの視線がビシビシ刺さってくるのが分かる。


「じゃあ、俺 忠春ただはると色々買ってくるからそこで真雪まゆき柚希ゆずきは席取りお願い」


「じゃあ、行ってくるね〜」


「え…」


一番二人っきりになりたくない相手と二人っきりになってしまった。

チラッと横を見ても何処と無く機嫌の悪そうな諏訪すわくん。


(俺なんかしたかな…)


居心地が悪すぎて無言になってしまう。


「なあ」


急に諏訪すわくんに声をかけられ身体がびくつく。


「…そんな警戒すんなよ」


「ぁ、ごめん」


「…お前さ海晴かいせいとはどういう関係なの?」


「…梶野かじのくん…?」


諏訪すわくんは頭をガシガシかいて何か言いにくそうな表情をする。


「お前 達樹たつきと付き合ってたんだろ?男が好きなんじゃねーの?だから…」


「違う!」


急に大きな声を出した俺に諏訪すわくんはびっくりして俺の方に顔を向ける。

そうだ…中学の時の同級生なら朱雨しゅうの事も知ってるし、朱雨しゅうとの関係も何となく気づいていてもおかしくない。


「…お前」


「違う…違うから、梶野かじのくんとはそういうんじゃ…」


「…おい」


俺の取り乱し様に眉間に皺を寄せる諏訪すわくん。


「…ただの友達だから…だから…」


「分かった!分かったよ、不躾に聞いて悪かった」


「……」


黙る俺に諏訪すわくんは一呼吸置いて口を開く。


「俺さ、お前と達樹たつきの事嫌いだったんだよ 中学の頃」


「………」


達樹たつきはたまにしか学校来ねー癖に毎回問題起こして喧嘩するわ、それを見て女子が怖がって泣くわ、あいつが来るとろくな事がなかった それに加えてお前はあの達樹たつきを意図も簡単に大人しくさせる それが気味が悪かった」


「………」


「それにお前学校では誰とも話してなかっただろ ほとんどの生徒から気味悪がられてたぞ」


あの時の俺は朱雨しゅう以外は全て敵だと思っていたから…。


「…だから、海晴かいせいに何かしたら絞めてやろうと思った 俺の大事な友達ダチだから」


「…思った?」


「…お前なんか印象変わったわ」


「……?」


「…まあ、いいやもう」


「…えっと、俺、あの 好きにならないから…安心して」


「………」


「絶対…ならないから」


「そういう意味で聞いたんじゃねーんだけど」


「…え?」


「別に純粋な気持ちならいいんだよ それが友情だろうが恋愛の好きが含まれていようがいまいが」


「………」


「俺の友達ダチを傷つけようと近づく奴は許さねーって話」


諏訪すわくんはただ俺が朱雨しゅうと仲が深かったのを知っているから何かに巻き込まれるんじゃないか、傷つくんじゃないかと心配していたのか…。


「…ごめん 傷つけるとか絶対ない…から」


「お前言ったからな!絶対傷つけんなよ!」


「うん、絶対…それに」


「ん?」


「俺もう二度と誰かを好きになる事ないから安心して」


「……お前、それどういう…」


「お待たせ〜!」


その時屋台から戻った大津おおつくんと梶野かじのくんが両手いっぱいに食べ物を抱えて戻ってきた。


「ほらほら!食べよーぜ!真雪まゆき何がいい?焼きそばもフランクフルトもあるぜ!どれがいい?」


「じゃあ、焼きそば貰おうかな」


「ユズは?ユズは何食べる?」


大津おおつくんが話しかけるが諏訪すわくんは何だか反応が薄かった。

多分俺の言葉が引っかかっていたんだと思う。

それを俺は気づかないふりをした。

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