第1話-⑱

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなり、体育の授業を終えた俺たちは教室へと向かう為靴を履き替える。


「つっかれたー体育ってまじで疲れるわ」


「そう言いながらちゃんとユズは体育するよね」


「そりゃ授業だからな」


「真面目…本当に見た目に反して真面目」


「あ"?なんか言ったか?」


「いや、なーんにも」


忠治ただはると下らない話をしながらジャージのズボンのポケットに手を突っ込みながら廊下をふたりで歩く。

すると目の前から海晴かいせいが走って来るのが見えた。


「おおい!海晴かいせい!」


声をかけるが俺たちの横を素通りする海晴かいせい


海晴かいせい!」


もう一度声をかける。


「あ、柚希ゆずき忠治ただはる!ごめん今日も先帰るわ!」


「は?なんで」


真雪まゆきの家行ってくる!」


それだけ言って海晴かいせいは行ってしまった。


「また、振られたね」


「変な言い方すんな」


忠治ただはるの言葉にいらっとしつつ、最近 海晴かいせい彼方おちかたを優先する事が増えたような気がする。それが何だか俺には面白くない。


「あの様子じゃ、彼方おちかた学校休んだんだろうね」


「だな」


海晴かいせいって優しいよね」


忠治ただはるの言葉に頷く。

本当に海晴かいせいは優しいんだ。

優しいから心配なんだ。彼方おちかたの隣に居ることで何かに巻き込まれるんじゃないかって怖いんだ。












さぁ…ここからどうしたものか。

気になって真雪まゆきの家の前まで来たのはいいがインターホンを押していいものか躊躇する。寝てたら起こしてしまっては申し訳が立たない。ノックして、反応なかったら帰るか?そもそも起きていてもノックの音って聞こえるのか?そんな事をぐるぐる考えながらどうしようかと考えていると…


「あ…」


声が聞こえた。

その声の方を見ると、アパートの廊下の先に両手に買い物袋を持っているたちばなが立っていた。


「あ…」


「今日も来てくれたの?」


「…まあ、様子見に?」


「…そう インターホン鳴らした?」


「寝てたら申し訳ないなと思ってまだ」


「あぁ…、真雪まゆき起きてるわよ さっきメッセージ送ったら既読着いたから」


そう言ってたちばなは遠慮せずインターホンを鳴らす。


真雪まゆきー!来たわよー!開けてー!」


すると中からバタンドタンと音が聞こえ勢いよく玄関の扉が開いた。


澄麗すみれ!来なくていいって何度も…」


長袖のTシャツにスウェットの真雪まゆきとバチっと目が合う。


「よっ」


挨拶をするが真雪まゆきの目はまん丸く見開き驚いた様子。


「か、梶野かじのくん…なんで」


「入るわよ、お邪魔します」


そんな真雪まゆきにお構い無しに真雪まゆきを押しのけ入っていくたちばな。さすが付き合い長いだけある。


「様子どうかなって、どう?大丈夫か?」


「…あ、」


「そんな玄関で話さないで、入りなさいよ」


たちばなは玄関で話す俺たちに家の中に入るように諭す。


「自分家みたいな言い方して…」


「私の家でもあるわよ、誰が契約したと思ってるの。ほら、海晴かいせいさん入って」


そのやり取りを見て、俺は真雪まゆきの顔を見る。


「…どうぞ」


「ん、お邪魔します」

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