第1話-④

「そいつはたまに学校に来ては暴れて窓割ったり、教師ボコッたり、喧嘩したり、したい放題で でも彼方おちかたの隣にいる時は妙に大人しくて。それが手網握ってる飼い主みたいで何処と無く皆 彼方おちかたの事が怖いというか気持ち悪くて誰も近づかなかったんだよ」


彼方おちかた、本人も誰ともつるまなかったしね いつもひとりでいたし近づき難いオーラ放ってたし」


「ふーんよく分かんねーな」


俺はそんな話はどうでも良くて目の前にある大きなパフェにかぶりつく。

このファミレスのパフェは値段はそこまでしないのにクリームたっぷりのフルーツもふんだんに使われ豪華で、毎回は頼まないがたまに頼んでその美味しさに酔いしれる。



「お前まじで聞いてねーだろ」


柚希ゆずきが俺の食べっぷりをみてため息をつく。

俺にとったら本当か嘘か分からない事なんてどうでも良くて、ましてや真雪まゆき、本人の話ではなく真雪まゆきの幼なじみの話なんて尚更どうでもよかった。











それから俺は学校へ行くと真雪まゆきの隣の席に座り一方的に話しかけるようになった。

特別何かを話すという訳でもないが、一方的に話す俺に初めは戸惑っていた真雪まゆきだが桜が完全に散って夏が顔を出す頃には真雪まゆきも俺の言葉に反応して返してくれる事が多くなった。



「はあ〜疲れた〜!」


一限から体育の授業を終えた日の昼休み。

俺は真雪まゆきとふたりで屋上でのんびり太陽の心地良い光に当たっていた。

朝から体育はまじで疲れる。誰だあんな時間割にしたのは…と心の中で悪態をつく。

パッと横を見ると涼し気な顔をして、紙パックの飲み物を飲む真雪まゆきの姿。


「………」


「お前さ、昼それだけ?」


俺の言葉に反応し俺の顔を見る真雪まゆき


「そうだけど…」


その言葉に俺は頭を抱える。

10代の健全な男子高生が昼は飲み物だけなんて有り得ないがこの真雪まゆきという男は極端に食べ物を食べない。

春頃からここ数ヶ月 真雪まゆきの傍にいたが食べないおかげで身体は細くカーディガンから覗く手首は本当に折れるんじゃないかと思うくらい細い。


「なに、お前お腹空かねーの?」


「ん〜、まあ…」


極端に食への執着がない。


「朝は?朝ごはんめちゃ食べるとか?」


「…食べない」


「夜は?」


「…夜は、お腹空いたらカップ麺とか?」


「は?」


こいつの脳の中枢おかしいんじゃねーの?

俺は3つある菓子パンの1つを真雪まゆきに渡す。


「ほら、食べろ」


「要らないよ」


「要らないじゃねーよ、食べなきゃ身体おかしくなんだろ 無理にでも食べろ」


無理やりにでも袋を開けた菓子パンを渡す。

俺の圧に負けた真雪まゆきは戸惑いながら小さな口をあけてパンをほうばる。

その様子を見ながら疑問に思った事を口にする。


「なあ、夜カップ麺とか言ったよな。親は?親は作ってくれねーの?」


「……親、いないから」

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