「今嘘だろって思ってるっしょ、嘘じゃないからなあ〜!ほら!」


そう言って彼は棚の写真たてを私に渡す。


そこには30人ほどの生徒と慎太郎さんが写っていた。


「去年担任してた子達。今はもう卒業しちゃったけど」


写真を見る彼は少し寂しそうな嬉しそうなそんな目をしていた。


写真に写る子ども達はみんないい笑顔をしていて、楽しそう。

私もこんな時期があったな なんて。


ひとりがひとりが屈託のない笑顔。

そして1番楽しそうな慎太郎さんの笑顔。


私は気づいたら写真の慎太郎さんの

笑顔を指で撫でていた。



「…紗雪さん?」


声をかけられ、我に戻る。


「…ぁ、ごめん、なさい」


私は写真たてを慎太郎さんに返す。


「みんないい笑顔でしょ」



そう言って彼はニコッと笑う。


私はその言葉に対し頷く。



優しい笑顔を向ける彼。



『気が済むまでここにいていいから』



あの日彼が言った言葉。

気が済むまで…

何の気が済むまでなんだろう。


慎太郎さん…本当は何を思ってるの?

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