⑥
「今嘘だろって思ってるっしょ、嘘じゃないからなあ〜!ほら!」
そう言って彼は棚の写真たてを私に渡す。
そこには30人ほどの生徒と慎太郎さんが写っていた。
「去年担任してた子達。今はもう卒業しちゃったけど」
写真を見る彼は少し寂しそうな嬉しそうなそんな目をしていた。
写真に写る子ども達はみんないい笑顔をしていて、楽しそう。
私もこんな時期があったな なんて。
ひとりがひとりが屈託のない笑顔。
そして1番楽しそうな慎太郎さんの笑顔。
私は気づいたら写真の慎太郎さんの
笑顔を指で撫でていた。
「…紗雪さん?」
声をかけられ、我に戻る。
「…ぁ、ごめん、なさい」
私は写真たてを慎太郎さんに返す。
「みんないい笑顔でしょ」
そう言って彼はニコッと笑う。
私はその言葉に対し頷く。
優しい笑顔を向ける彼。
『気が済むまでここにいていいから』
あの日彼が言った言葉。
気が済むまで…
何の気が済むまでなんだろう。
慎太郎さん…本当は何を思ってるの?
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