⑤
「紗雪さん!紗雪さん!」
優しい声が私を夢の世界から現実世界に引き戻す。
目を開けると目の前に慎太郎さんの顔。
「起こしてごめんね、もう19時だよ、今日まだ何も食べてないよね?夜ご飯食べよう。」
彼は私を起こして、リビングテーブルに向かうために手を引いてくれる。
赤の他人で3日前まで全く知らない人だったのに、何故こんなに優しくしてくれるんだろう。
テーブルの上には食欲のない私にも食べやすいように野菜スープが置かれていた。
「これなら食べられる?」
「……どうして、こんなに良くしてくれるんですか?」
突然発した声に彼は少し驚きをみせるが、またふんわりとした表情に戻り
「なんとなく」
そういって笑う。
私はますます彼が分からない。
「………変な人…」
あ、つい本音が…
「うおい!一応俺先生やってんだからね!」
両腕をくんで、口を膨らます慎太郎さん。
彼の予想外の一面に驚きを隠せない。
「…ぇ 先生なの?」
「そうだよ、小学校の先生してんの」
彼は小学校の教師だった。
嘘でしょ。全然見えないんだけど。
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