「紗雪さん!紗雪さん!」


優しい声が私を夢の世界から現実世界に引き戻す。

目を開けると目の前に慎太郎さんの顔。


「起こしてごめんね、もう19時だよ、今日まだ何も食べてないよね?夜ご飯食べよう。」


彼は私を起こして、リビングテーブルに向かうために手を引いてくれる。


赤の他人で3日前まで全く知らない人だったのに、何故こんなに優しくしてくれるんだろう。


テーブルの上には食欲のない私にも食べやすいように野菜スープが置かれていた。


「これなら食べられる?」


「……どうして、こんなに良くしてくれるんですか?」


突然発した声に彼は少し驚きをみせるが、またふんわりとした表情に戻り


「なんとなく」


そういって笑う。

私はますます彼が分からない。


「………変な人…」


あ、つい本音が…


「うおい!一応俺先生やってんだからね!」


両腕をくんで、口を膨らます慎太郎さん。

彼の予想外の一面に驚きを隠せない。


「…ぇ 先生なの?」


「そうだよ、小学校の先生してんの」


彼は小学校の教師だった。

嘘でしょ。全然見えないんだけど。

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