駅のホームで彼は私の自殺を止めた。

この世界に未練もないし、ただただあの世界から抜け出したくて抜け出せる手段が死ぬことしかなかった。


ただもうどうなってもいいやと思って流れに身を任せていたら何故か慎太郎さんの家にもう3日もいる。

自分でもこの展開は予想外だった。

見知らぬ赤の他人の家に女が警戒もなしに着いていけば酷いことをされても文句は言えない。

自ら誘いに乗っているのだから…。

だけど、何もされない。彼は指一本私に触れない。自身のベットを差し出してゆっくり寝てねと言い残し自分はソファーで世を明かす。

夜ご飯はきちんと自炊し私の分まで用意してくれる。信じられないくらい至れり尽くせりの生活。




そして相変わらず私の手の中にあるスマホはブーッブーッブーッと震える。

出なければいけないのに、通話のボタンが押せない…かと言って電話も切れない。


私は携帯の電源を消して、ソファの上で丸くなる。

夜眠ることが出来ないせいか、昼間に襲ってくる睡魔。私は意識を手放した。

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