⑦
『…お母さん、寂しいよ…』
『大丈夫?』
遠い記憶。幼い私。
帰りの遅い母を私はいつも外で待っていた。
寂しくて寂しくて、いつも団地の階段に座って母を待つ。
泣きながら、『寂しい』と言いながら。
そんな時いつも、お隣の高校生のお兄さんが声をかけてくれて、家に招いて私の好きなホットミルクを出してくれていた。
私が引越しをするまで、寂しい時はいつも彼がいた。
「…お兄さん?」
「やっと思い出した」
「…嘘」
「全然思い出さないんだもんな〜まあでも無理もないけど…君まだ幼かったし」
「よく私だってわかりましたね…」
「…なんとなくね、名前で分かったって感じ 俺も確信はなかったけどね」
松村さんはふにゃっと笑ってなんだか嬉しそうだった。
「ぁ、冷めないうちに飲んで」
「…ありがとうございます」
ホットミルクに口をつける。
懐かしい味。
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