④
「はい、お茶」
「ありがとう」
お茶を飲むために律は一旦本を閉じる。
「それってどういう話なの?」
律は目でこれ?とでもいうように視線を向ける。俺は頷いた。
「幸せの絶頂から不幸に落ちていく話。」
「お前そんなの読んで気分悪くなんねーの?」
「……ならないよ、だから読んでるんだよ」
「…ふーん」
そう言ってまた本を開く。
教室の少し空いた窓から寒い風が吹いてくる。
律のふわっと長い前髪が風に仰られる。
その隙間から一瞬見えたどこかにぶつけたように青くなっている跡。
「………………」
なんとなく分かってはいるんだ。
そう、俺だって同じだよ。
分かっているのに、何もしないんだ。
今のこの生活を変えたくないんだ。
何もしないんだ。
何も出来ないんだ。
少し見えている律の傷跡。
俺は乱れている律の前髪を直した。
「なんだよ、気持ち悪い」
そう言って俺の手を振り払う。
俺はクスッと笑う。
「…………」
律も少し笑う。
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