子どもか…。


病院を後にして、帰路につく。


ただぼーっと道を歩く。


自分が親になるってどんな感情なんだろう。

予想がつかない。


すると鞄の中の携帯がなる。


ディスプレイを見ると 母 の文字。


私の心が一気に曇る。


「もしもし…」


『あ、もしもし?やっとでた。』


「なに?」


『何じゃないわよ、あんた瑞樹ちゃん出産したんだって?』


「うん…」


『もーあんたは!あんたも早く子ども生みなさい!結婚まだなの?同棲してるんでしょる』


母はいつも小言のように結婚だの出産など一方的にまだかまだかと話してくる。

それが私にとって苦痛でしかない。


「…ごめん。お母さん今から仕事の打ち合わせがあって、切るね」


『ぁ、ちょっと答えないさ』ブチッ


「…はぁ…」


一気に疲れた。



『子ども可愛いよ』


瑞樹の言葉が蘇る。


「そう思えたらよかったのに…」


マンションのエントランスにぼそっとつぶやく声が響く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る