小さな小さな手が私の指を握る。


「指ぎゅってしたね」


「うん」


私の腕に抱きかかえられた小さな小さな命。


つい先日この世に誕生したばかり。


「体調はどう?」


ベットに横たわるこの子の母親に聞く。


「まだ身体の色んなところが痛い。出産って本当に大変だわ、地獄よ地獄」


私は苦笑い。


「でも、可愛いよ。凄い可愛い」


もう母親の顔だ。

そう思った。


瑞樹は高校からの友達で、大学に行っても

就職しても仲良く定期的に会ってお互いの近状報告をしていた。


瑞樹の結婚式にも行ったし、妊娠報告も1番に受けた。


「柚希は?最近どう?彼氏とは」


「うん、相変わらず」


「そう、ならよかった。きっと柚希の子ども可愛んだろうな」


「え?」


「だって、柚希の彼氏凄いイケメンじゃない?柚希も目くりくりして可愛いしきっと可愛い子が生まれるよ。」


「…そーかな」


「そうだよ、この子と友達になってくれるかな〜。ね〜楽ちみでちゅねぇ〜」


瑞樹は私の腕の中の赤ちゃんのほっぺをつんつんとつつく姿を見てなんだか嬉しいような寂しいようなそんな感情が渦巻いた。

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