⑨
あの後目が覚めると真っ白な天井が目に入った
ここはどこだろうあの世かな
なんて思っていると医者や看護師が入ってきて、ここは病院だって分かった。
私は死ねなかった。
柊くんが言った通り…。
「名前言えるかい?」
医者が私に聞く
「
「歳は?」
「…18」
「意識ははっきりしているね」
「…柊…くん、は?」
医者の顔が曇るのが分かった。
「君と一緒に飛び降りた子は亡くなったよ」
「………え…」
「君は運良く植木の土の上に落ちた。彼はコンクリートの上だった。」
そう言われて走馬灯のように記憶が蘇る。
『俺がこっち。君は右。』
『………?』
『なんとなく。次生まれ変わったら幸せになれたらいいな…』
そう言って君は…。
「…そういうこと…」
18の夏、人生の中で1番後悔した夏になった。
そこから後は目まぐるしい日々だった。
ニュースでは連日のように私たちの事が放送されいた。
柊くんの家のこともだいぶ後になって知った。
もう今となっては彼には何も聞くことは出来ない。
私は直ぐに引越しをして高校を転入した。
そこからは普通に大学に通い、その後社会人になった。
「遅くなってごめんね」
もう二度と話す事がない彼に今日は逢いに来た。
冷たい彼に手を合わせる。
「柊くんに会えるようになるのに10年もかかっちゃった。」
ねえ、柊くん。
あの時声をかけてくれたのはあなたの精一杯の優しさだったのかな。
あの時私が強かったなら、一緒に生きようって言えてたのかな。
もう何も聞こえないけど、あなたの声がもう一度聴きたいよ。
あなたは最後まで優しかったね。
「…柊くん、ありがとう」
私は貴方を忘れない。
貴方がくれた命、幸せになるね。
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