⑩
柊
暗い空に少し強い風。
屋上の柵の向こうで震える足。
頭では死にたいと思っているのに身体は拒否反応を示す。それがおかしくて笑いそうになった。
その瞬間握られている手にぎゅうと力が入る。
隣には同じく暗い瞳をしている彼女の姿。
明らかに乱れた服に殴られたであろう頬。
何をされたか簡単に想像が出来た。
でも俺は何も聞かなかった。聞けなかった。
「俺たちには神様がいないみたい」
そんな言葉が出た。本当に笑えるような人生だ。
「君が死んでも明日は来るし、世界は何も変わらない」
「…………」
「…それでも、俺と一緒に死ぬ?ふたりで」
初めて目が合った。
今にも泣きそうな…でも芯のある瞳。
「…ふたりなら怖くないね」
その言葉に俺は微笑んだ。
そうだ、ふたりなら怖くない。
怖くない…けど、ごめん。救えなくてごめん。
こんな選択でしか君を救えない俺を許してほしい。
屋上から下を眺める。
「俺がこっち。君は右。」
「………?」
きょとんとする君の顔に最後の願いを込めた。
「なんとなく。次生まれ変わったら幸せになれたらいいな…」
俺はもういいから…だから神様というひとがいるなら
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